まちに還すコミュニケーション

場のチカラ プロジェクト|Camp as a participartory mode of learning.

出雲キャンプ(→ 11月に延期)

◉9月28日(金)〜30日(日)で予定していた「出雲キャンプ」は、11月に延期することになりました。

出雲で考える・つくる

ぼくたちの「キャンプ」は、いつも幸運な出会いではじまります。2018年度秋学期は、あたらしいメンバーを迎えて、出雲市(島根県)に出かけることになりました。まちの人びとを対象に取材をおこない、その結果をもとに滞在中にポスター/ビデオなどを制作する予定です。

7月の中旬、渋谷の某所(高所)で、(かねてから知り合いの)浦山さん(うらりん)をはじめ、何人かとテーブルを囲む機会がありました。ぼくは、別の会合の帰り道で、最後にその集まりに加わったのですが、そこにいたメンバーは、大部分がその日が初対面という間柄。ぼくの隣りにいたのが、藤田さんでした(初めてお目にかかりました)。ポスターづくりの話をしたら、もう説明しなくてもわかっているというくらいの好感触で、ぼくとしては、島根県は「未踏」なので、ぜひお願いしますというアピール(もともと、うらりんからは、カレーキャラバンを島根で、と前からお声がけいただいていました)。今回は、カレーじゃないけど、出かけます。その場で、候補日を伝え、あとは、オンラインでやりとりして、実施することを決めました。藤田さんには、島根に戻ってからさっそく調整していただき、今回は、出雲市の中町商店街(協同組合中町商店会)の協力をえて、「キャンプ」が実現することになりました。これが、34か所目。ぼくたちのポスターづくりのプロジェクトは、今年の9月に10年目に入ります。

わずかな滞在時間ですが、まちを歩くこと、人と出会うこと、「ちいさなメディア」をつくること/流通させることの可能性や意味について考えてみたいと思います。最終日(30日)には、ポスター展と成果報告会をおこなう予定です。

 

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SOURCE:中町商店街 - 出雲市中心商店街公式ウェブサイト

  • 日時:2018年9月28日(金)〜30日(日)(原則として現地集合・現地解散)
  • 場所:出雲市(島根県
  • 本部(作業):ともに(〒693-0001出雲市今市町中町1374番1)*ツバメヤ向かい(元 学生服のヤマネ)
  • 参加メンバー(加藤文俊研究室)20名(学部生 18名;大学院生 1名;教員 1名)

📢プレスリリース:出雲キャンプ(フィールドワーク)について(2018年9月17日)→ pr_180917.pdf

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スケジュール

9月28日(金)

  • チェックイン
  • 18:00〜18:30 集合
  • 18:30〜 オリエンテーション・交流会

9月29日(土)

  • 10:00ごろ〜 フィールドワーク・インタビュー(グループごとに行動・取材先に応じて随時スタート):2名のグループで、インタビュー先に出かけて話を聞きます。もちろん、写真も撮ります。
  • 14:00ごろ〜 アイデア出し・デザイン作業(グループごとに行動):フィールドワークで集めてきた素材をもとに、ポスターのデザイン/編集作業をすすめます。
  • 17:30ごろ 夕食
  • 19:00ごろ〜 アイデア出し・デザイン作業(つづき)

9月30日(日)

  • 8:00 ポスターデータ入稿:データ提出(時間厳守)→ 印刷へ
  • 10:00〜 展示準備・設営 会場:ともに(〒693-0001出雲市今市町中町1374番1)
  • 12:00ごろ〜 「出雲の人びとのポスター展」
    (12:30〜 成果報告会;13:30〜 ふり返りビデオ鑑賞・まとめと講評)
  • 14:00ごろ 片づけ・解散

桜丘フィールドワーク(4)

 Day 4:ふり返る

 2018年8月9日(木)11:00〜(@大学)

⛅️4日目。台風の行方が心配だったので、1時間遅れでスタート。結局のところ、東京・神奈川はさほど影響を受けずに済んだようで、朝から蒸し暑くなった。きょうは、これまでの3日間のフィールドワークのふり返りをおこなう。

 

折り本

まず「折り本」は、データの一部を修正し、簡単な紹介文を添えて、PDFファイルとともにウェブで公開した。コンビニのネットプリントを利用して出力してみたが、なかなかキレイにできた。今回は、グループ(ペア)で一冊。やろうと思えば、ひとりで一冊もできるはずだ。そうなると、たとえば20人でまちを歩けば、20冊のちいさな本ができる。それは、まちがいなく楽しい。
[折り本をまとめてダウンロードする http://fklab.net/pdf/sakuragaoka_orihon.pdf

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マップ

つづいて、3日間のフィールドワークをふり返りながら、みんなでマップ上に「ピン」を立てた。8人が、それぞれの歩いた軌跡や出会った〈モノ・コト〉を思い出しつつ、同じマップ上に「ピン」を立て、コメントや写真を載せた。他愛のないものもあるが、もちろん、それでかまわない。一人20個くらいを目安に作業したので、地図はだいぶ賑やかになった。ひとまずひと区切りということで、このマップは、しばらくこのままにしておくつもりだ。というのも、できるかぎり(少なくともいまの段階では)、みんなの意見を集約するようなことはせずにおきたいからだ。

8人いれば、その数だけ、桜丘町での過ごし方がある。一つひとつの「ピン」は、じぶんの(あるいは誰かの)主観的・個人的な体験の記録だ。それをマップという形で一覧しながら、こんどはその断片をつなぎ合わせてみる。じぶんの「見え」を見つめ直して(Seeing the "seeing" of onself)、さらに他者の「見え」を参照しながら(Seeing the "seeing" of others)、桜丘町を再編成してゆく。そのプロセスで、ぼくたちはさまざまなことを学ぶ。そのためにも、すべての「ピン」を集めてグルーピングしたり、ラベルをあたえたりすることは、ちょっと保留しておく。ばらばらにしておくのだ。

 

桜丘のマップ|8月5日(日)〜7日(火)までの3日間、桜丘町を歩いて気づいたこと・感じたことを、一人ひとりがマップ上に位置づけた。(※アイコンをクリックするとコメントや写真を参照できます。)

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スライド資料から

この一連の考え方は、『キャンプ論』*1でも触れているが、『ものと人の社会学』*2の序文「スナップショットの方法」に負うところが大きい。実際に、今回のプロジェクトにかぎらず、ぼくたちのふだんの活動を整理し、実践的な活動に結びつけるさいに、この論考は役に立つ。

スライドに要約しているとおり、まずは、じっくりと眺めることから。ぼくたちは、まち歩き/フィールドワークの成果を、すぐに言語化・形式化しようとしがちである。言うまでもなく、その要請がある場合も少なくない。多くの人は、わかりやすい「こたえ」や「手がかり」が求めているからだ。だが上述のとおり、ことばを当てはめることは(ひとまず)しないでおく。
その上で、一つひとつの「ピン」(一枚一枚のスナップショット)を組み合わせて、じぶんなりのストーリーを構成してみる。そのプロセスをとおして、じぶんにとってのまちの理解がかたどられることになる。ひとたび輪郭が見えてくると、こんどは、その「外側」へと想像力をはたらかせることができる。

2007年の夏(もう、ずいぶん前だ)、「100人の浅草モダン」という企画にかかわる機会があった。100人の参加者が、それぞれレンズ付きカメラを手にして浅草のまちに散る。決められた時刻までに撮り終えて、あとですべての写真を展示するというものだ。東京駅、築地、東京タワーなど、対象地を変えながら、何年か続けて実施されたイベントだ。その概要などをまとめたリーフレットに、『みんなの写真』というタイトルの文章を寄せた。*3

ふだんは、気に入ったものだけえらんだり、適当に順番を並べかえたりして、写真を眺めることが多いのですが、この展示は、撮った写真がすべて、しかも撮った順番どおりに並べられてしまいます。これは、あとから編集することが許されない、「連写真」ともいうべきものです。正確な時間まではわかりませんが、27枚の写真を順番に見ていくと、どのような順序で、何を見ながら浅草での時間を過ごしたのか、歩いた軌跡を大まかに復原することができます。「連写真」は、紙芝居のように、じぶんの状況を追体験できることが愉しいのですが、写真と写真の「あいだ」の部分も気になります。コマとコマの「あいだ」にじぶんが何をしていたのか…。それを考えてしまいます。途中で学生たちと早めのお昼を食べて、ビールを一杯。その「あいだ」は、撮影が中断されます。シャッターを押さなかったという「記録」は、写真と写真の「あいだ」に残ります。

 

いうまでもなく、「記録」することに一生懸命になっていると、その場に「介入」することはできません。仲見世を歩きながら、焼きたてのアツアツのおせんべいを味見したいとき、カメラのファインダーをのぞいていたら、食べることはできません。食べていたら、試食の様子を「記録」として残すことはできなくなります。つまり、「記録」を残すという役割は、「介入」を放棄することによって成り立つのです。逆に、現場への「介入」は、まさに体験としてその場を味わうということなので、「記録」にこだわっていては、もったいないのかもしれません。ときどき、愉しく過ごしたときの写真が、一枚もないことに気づきます。きっと、シャッターを押す余裕がないほど、夢中になっていたからです。

 

写真がひとつの「記録」であることはまちがいないでしょう。でも、写真として残されてゆく〈モノ・コト〉は、もしかするとそれほど重要ではないのかもしれない…と考えることもできます。むしろ、意味があるのは、シャッターを押すことができなかった時、押さなかった時の「記憶」なのかもしれません。写真として展示されている〈モノ・コト〉の「あいだ」にこそ、ぼくたちの体験が写されているのです。

 

さらに興味ぶかいのは、あの日、まちを撮影していたのは、ひとりだけではないという点です。100人分の「連写真」を目の前にすると、まずはそのボリュームに圧倒されます。順番にじっくり、ゆっくり見ていくと、ひとりひとりの歩いた軌跡がわかります。だれかの写真が、じぶんの歩いた軌跡と重なったり、すれ違ったり。同時に、いくつもの「あいだ」を想い浮かべることもできます。じぶんの「あいだ」の時間を、だれかの写真が埋めてくれることもあるはずです。実現できるかはわかりませんが、いちど、みんなの写真をすべて床の上に並べて、それこそビールでも飲みながら、あれこれおしゃべりしながら、並べかえてみると面白いにちがいありません。それは、2700 の細片から成る巨大なジグソーパズルのようなものです。当然のことながら、完成予想図はないので、想像力も根気も必要な作業になります。そもそも、完成させる必要さえないのかもしれません。

 

一枚一枚の細片をつなぎ合わせ、いくつもの「あいだ」を埋める試みをつうじて、ぼくたちの日常生活が、じつに豊かで起伏に満ちていることに、あらためて気づくでしょう。100人が、1000人、10000人になったとしても、すべてを「記録」することは不可能です。ぼくたちが写真を撮れば撮るほど、ジグソーパズルは大きくなり、埋めるべき「あいだ」も増えてゆきます。それでもなお、カメラを持ってまちを歩きたくなるのは、みんなの写真があれば、探している細片に出会う可能性が広がるような気がするからです。

その翌年(2008年)には、「100人の東京タワー」のお手伝いをしたが、そのときは『ちょっとの力』というタイトルで文章を書いた(抜粋)。*4

(中略)

毎年、どこかのまちや建物が「お題」として与えられ、私たちは、「ちょっと」写真を撮りに出かけます。キラリと光る1枚も、指が写り込んでしまった失敗作も、すべての写真が束ねられたとき、あの雨模様の土曜日が、豊かに復原されます。少数の「専門家」が、記録写真を撮るのではなく、100人分の「ちょっと」が、東京の風景を残してゆくのです。「ちょっと」という気軽さのなかに、とても強い力を感じます。それは、私たちが、東京の風景に対していだいている、無償の愛情なのかもしれません。

1枚の写真でとらえられた「決定的瞬間」ではなく、100人が写した3000枚近い写真の連なりから、まちを感じ取ること。桜丘フィールドワークのマップも、基本的には同じ考え方にもとづいてつくっている。少数の「専門家」が語る桜丘町ではなく、たとえば100人が、少しずつでも桜丘町について語る。その細片をつなぎ合わせることこそが、ぼくたちの日常生活をいきいきとさせる。解釈が多様であることを前提に、まちを性格づけるための方法や態度に興味があるのだ。

 

ブックマーク(リンク集)

さらに、みんなでもう一つ作業に着手した。それは、ウェブ上で閲覧できる桜丘町にかんする情報のリスト(ブックマーク)づくりだ。自治体からのお知らせ、再開発計画の資料、ニュース、ブログ記事など、桜丘町にかかわるネタにアクセスするための「入口」として整えてみようと思う。全員で手を動かして、1時間足らずで70件ほどのリストができた。これについては、継続的に作業をすすめて、もう少し整理できたら公開しようと思う。

「桜丘フィールドワーク」は、ここでひと休み。1か月後にもう一度集まって、まとめをおこなう。ひとまず、お疲れさまでした!🐸(つづく)

*1:加藤文俊(2009)『キャンプ論:あたらしいフィールドワーク』慶應義塾大学出版会

*2:原田隆司・寺岡伸悟(2003)『ものと人の社会学』世界思想社

*3:この文章は、2007年のレンズ付フィルムによる写真展「100人の浅草」のリーフレットに掲載された。

*4:以下の引用は2008年のレンズ付フィルムによる写真展「100人の東京タワー」のリーフレットに掲載された(抜粋)。

桜丘フィールドワーク(折り本)

折り本をつくる

2018年8月7日(火)

3日目は、4つのグループに分かれて(今回の参加者がちょうど8人だったので、4ペアになった)、それぞれの観点から桜丘町をとらえて、「折り本」をつくった。A3サイズで面付けしておいて、下図のように中央に切り込みを入れて折りたたむと、8ページのちいさな本になる(仕上がりはA6サイズ)。

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まちなかでメディアをつくるときは、コンビニのプリンター(複合機)を活用すると便利だ。PDFファイルを出力することはもちろん、たとえばネットプリントのサービスをつかえば、「折り本」を配布(配信)することもできる。
現場でつくる(形にする)のは、いつもの「キャンプ」とおなじ。桜丘町で、桜丘町を素材にした4種類のちいさな本がうまれた。[折り本をまとめてダウンロードする http://fklab.net/pdf/sakuragaoka_orihon.pdf

 

◎THE COLOR OF SAKURAGAOKA(比留川 路乃+小梶 直)

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“THE COLOR OF SAKURAGAOKA”は、桜丘のまちの色をテーマとした折り本だ。私たちが気になった「色」をとおして桜丘を歩けるよう、ヒントとなるスケッチとともに写真を載せている。

 

◎桜丘 コンビニ歩き(牧野 岳+笹川 陽子)

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この冊子では、桜丘付近のコンビニ10店を紹介している。紹介といっても、「どこにどの会社のコンビニがある」という紹介ではない。編集者が全てのコンビニを歩き回った経験から、独断と偏見で10店を評価した。均質さの象徴であるコンビニから、それぞれの土地柄がわかる。そんな一冊になっている。

 

◎桜丘町の頑固な自転車たち。(小島 信一郎+ピッチャー スパンタリダー)

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桜丘には多くの放置自転車があった。私たちは街を歩き、それらを探した。面白いことに多くの自転車は街の周り、つまり坂の下にあった。坂を登ることを諦めた人が置いていったのだろうか。様々な場所で見つけた放置自転車をジャンルごとにまとめてみた。この本で桜丘の自転車達を知ってほしい。

 

◎桜丘 左回りツアー/桜丘 右回りツアー(太田 風美+久慈 麻友)

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今回私たちは、折本の特徴を活かし、右からも左からも読むことができる桜丘ツアーガイドを作成した。実際に歩いてみて感じた印象や特徴をもとに、桜丘をエリア分けしてそれぞれ名前をつけた。この本を片手に桜丘を歩けば、まるで某テーマパークにいるかのような気持ちを味わえる。かもしれない。

桜丘フィールドワーク(3)

Day 3: ふたりで歩く

2018年8月7日(火)10:00〜(桜丘町+文化総合センター大和田)

☔️3日目。朝から雨。気温もぐっと下がって、少し肌寒いくらいだった。猛暑にくらべれば身体はずいぶん楽だが、雨のなかのまち歩きは面倒だ。きょうは、ペアワーク(昨日の終わりの段階で、ペアを決めておいた)。ふたりで桜丘町を歩き、その成果を「折り本」にまとめる。最初に簡単な説明をして、あとはそれぞれの都合や段取りに合わせて動くことにした。幸いなことに、雨が上がって、傘をささなくてもいいくらいになった。

ぼくも、もう一度「壁」の界隈を歩いてみた。坂の途中から、渋谷駅のビル(東棟)、ヒカリエ、そして渋谷ストリーム(9月にオープン)が見える。すでに、ここから眺める空は変わってしまったのだ。とくに駅の「東棟」は存在感がある。そして、いずれは、これらの3つのビルさえ見えなくなるように(つまりさらに手前に)ビルが建つことになる。そもそも、ぼくたちのサイズで、ぼくたちの視座で眺めるまちは、図面やパースとは本質的にちがう。想像力を豊かにしないと、変わりゆくまち並みのことを語るのは難しい。

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空が狭くなる。 #sakuragaokap

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ドア。 #sakuragaokap


昨日も触れたが、やはりグラフィティやステッカーは「空き」のしるしなのだろうか。線路沿いのビルは、カラフルに染まっている。ちょっと検索してみると、近年、渋谷の落書きが、増えているようすがわかる。「空き」(やがて仮囲いができて解体されるはずの場所)にかぎらず、センター街の店などもシャッターにたびたび落書きされるようだ。観光客が深夜に落書きをして、逮捕されることもある。「(他の落書きを見て)渋谷では落書きをしても問題ないと思った」とのこと。「外」から見た渋谷のイメージについても、もう少し考えてみたほうがいいのかもしれない。


渋谷の街に落書き 豪少年2人を逮捕

 

午後は、それぞれのペアで「折り本」づくりに取り組んだ。もう8年前になるが、「高崎キャンプ」では「折り本」をつくった。そのときは、午前中にまちの人びとの取材をおこない、翌朝までに編集を終える段取りだった。今回は、人に話を聞くことはなかったが、(午前中のフィールドワークを経て)夕方までに完成を目指すというかなりタイトな設えで試してみた。やはり2時間くらいで完成させるのは難しいが、それでも午後の3〜4時間をかけて、無事に4つの「折り本」が完成した。

16:00ごろ。完成したばかりの「折り本」の原稿を壁に映しながら、プレゼンテーションをおこなった。どれも個性的で、かなりいい出来栄えだと思う。コメントなどをふまえて少し修正されるとは思うが、きょう一日で、フィールドワークからまとめまで終えることができた。ここのところ「キャンプ」ではポスターをつくることが多いが、「折り本」も、ペアで取り組むプロジェクトとしては、ちょうどいいのかもしれない。(あるいは、ふたりひと組で「折り本」をつくるワークショップを設計することもできるだろう。)

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作業中。 #sakuragaokap

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プレゼンテーション

あっという間の3日間だった。そのあとは、近所に住んでいるF君と合流。みっちーとともに、まさに消えゆくあたりにある「富士屋本店」に行って、國枝研と加藤研の共通点のようなことについて語った。明日(8日)はひと休みして、9日はキャンパスでこの3日間をふり返る予定。🐸(つづく)

 

桜丘フィールドワーク(2)

Day 2: ひとりで歩く

2018年8月6日(月)10:00〜(桜丘町+文化総合センター大和田)

🌞2日目。きょうも暑い!「雨が降って、少しは涼しくなりそうだ」という、昨晩の予報は、いったいどこへ。昨日と変わらぬ暑さ。予定どおり全員が集合して、オリエンテーションののち、まちに散った。今回のプロジェクトでは、桜丘町を対象に「風俗採集」をおこなうことになっている。「風俗採集」は、マンホール、階段、「すき間」など、もっぱら〈モノ〉の観察をとおしてまちの理解を試みるやり方だ。人との直接的なかかわりを持たなくても、さまざまな〈モノ〉には、人びとの想いや行動が表れている。人びとのいとなみの所産を、ささやかな〈モノ〉から読みとるセンスを育んでおくことは、とても大切だ。やがて、まちは、ちがって見えてくる。「風俗採集」については、(いつものように)スケッチとテキストで編集して、冊子をつくる予定だ。

午前中は、一人ひとりが「風俗採集」を考えつつ、テーマに即してまちを歩くことにした。このプロジェクトを企画したときには、午前中ならまだそれほどでもないだろうと思っていたが、すでに暑い。スケジュールでは、まち歩きに2時間ほどを充てているが、休みながらじゃないと身体がもたない。

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手前には瓦屋根、向こうに巨大なビル。 #sakuragaokap

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やがて消えてしまうのか。 #sakuragaokap

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グラフィティは、「空き」のしるし? #sakuragaokap


ぼくも、少し歩いてみることにした。昨日、桜丘町の外周を巡ったときに、線路沿いの辺りが気になった。というのも、駅にほど近いエリアは、立ち呑みもお粥もピザも、そして歯医者も、個人的には、たびたび足をはこんでいるからだ。しばらく前までは、ドラッグストアもあった。昨日歩いてみて、テナントが去って「空き」の状態になっている(ように見える)ビルが多いことに気づいた。線路沿いのビルは、グラフィティで彩られていた。グラフィティは、「空き」のしるしなのかもしれない。

2014年の段階で公表されている「渋谷駅桜丘口地区再開発計画」の文書を見ると(その後、もちろん変更・修正などあったと思うが)、かなり大がかりな再開発計画だということがわかる。このあたりの細い道は、いくつもの店とともに姿を消すのだ。そう思ったとたんに、なんだか急に愛おしくなって、この辺りをうろうろしながら、しばらく過ごした。

昨日、線路側と246側からだと、桜丘のまちが見えないように、まるで「壁」のようだと書いた。図面やパースを眺めると、その見立てはさほどまちがっていないように思えてきた。なるほど、たしかに「壁」のようだ。線路沿いには高層の「壁」ができる。246側には、すでに塔(セルリアンタワー)がある。「城塞都市」に見立てるとなると、城はインフォス塔の辺りということになるのだろうか。なんとも不思議な感じがする。スケール感のちがいに戸惑いもある。桜丘町は、大きな「壁」によって守られるという見方もできるが、逆に、「壁」によって「渋谷」(渋谷駅西口方面、さらにはハチ公口方面)が隠されてしまうとも言える。どういう立場で、どちら側にいるかによって、「壁」の意味は揺らぐ。

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出典: http://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/news/pdf/217 (2014年6月)


さらに、この図面には「補助第18号線」という道路の計画も載っている。これについては、知らなかった。いまある道筋が引き直されるらしい。ますます、この「壁」の辺りを歩いてみたくなった。

ランチは、なおが予約してくれたイタリアンの店で。木曜日あたりに台風が接近するというニュースが、壁に映し出されているのを眺めていた。ランチを食べてから、ふたたび文化センターに戻って、午前中のまち歩きのようすを順番に発表した。いろいろ、面白そうな観点があった(秋学期につながるかもしれない)。まずは、それぞれの五感を駆使して桜丘町をとらえ、それを素直にまとめてみる。その過程で、一人ひとりの「個性」を映す、それぞれの桜丘が見えてくるだろう。

明日は、2人ひと組で歩くことになっている。その成果は、折り本にまとめるつもり。ひさびさの折り本づくりだが、やはり「(なるべく)宿題は持ち帰らない」というやり方は、日頃からトレーニングしておきたい。(とくに大きな問題がなければ)明日の夕方には、4冊(4種類)の折り本が完成しているはずだ。🐸(つづく)