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まちに還すコミュニケーション

場のチカラ プロジェクト|Camp as a participartory mode of learning.

電車にゆられて、まちを想う。(湘南編)(2007)

江ノ電フィールドワーク|2007年4月〜7月 神奈川県 湘南エリア

江ノ電ギャラリー|2007年7月9日(月)〜20日(金) 江ノ電車両(全28車両)

 

湘南を歩く

道路や鉄道は、地域や都市のイメージをつくるのに重要な役割を果たしています。ときには「エッジ」となって、そのイメージを分断することもありますが、 場所に対する親しみやすさや愛情は、おそらく、ぼくたちが考えている以上にバスや電車などの交通機関と関係しているように思えます。なによりも、通勤や通学など、多くの人びとの毎日の「足」として、日常生活にとけ込んでいます。ぼくたちが、毎日ながめている「あたりまえ」の風景は、こうした公共交通機関の路線と無縁ではないはずです。

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フィールドワークを継続的におこなうためには、比較的コンパクトでわかりやすい現場(フィールド)をさがすのが望ましいのです。江ノ電は15駅(藤沢〜鎌倉: 34分)、湘南モノレールは8駅(大船〜湘南江の島: 15分)。江ノ電は海側から、そして湘南モノレールは山側から“湘南”というエリアを際立たせます。もちろん、どこからどこまでが“湘南”か…を規定するものではありませんが、調査対象となるエリアを、わかりやすく理解することができます。こうした考えにもとづいて、江ノ電と湘南モノレール沿線のフィールドワークを計画しました。

 

地域ポータルを活用する

フィールドワークには、フィールドノートが不可欠です。いわゆる調査日誌だけでなく、写真や音声などのデータも、逐次整理をしながら、フィールドでの体験を綴るための素材を集めるのです。

最近では、ウェブ日記やブログとして、フィールドノートを綴ることもあるようですが、今回は、地域ポータルを活用することにしました。縁あって、“湘南 Clip”という地域ポータル(湘南密着型ポータル)のスタッフのかたがたに出会いました。まずは、みんなでユーザ登録をして、毎回のフィールドワークでの所感を綴ったり、写真を載せたりするかたちで使ってみることになりました。

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最近の地域ポータルは、SNS機能をもっていることが多いので、登録したメンバーどうしがお互いのフィールドワークの進捗を見ながら、すすめることができます。また、当然のことながら、タウン情報や地図なども役立ちます。知っているどうしで使えば、地域ポータルは便利なグループウェアになるのです。もちろん、あたらしいつながり(お友達のお友達…という連鎖)が、育まれることもあります。

 

電車をギャラリーにする

研究室のメンバーは、定期的に現場を訪れながら、3か月ほどフィールドワークを続けました。逐次、ポータルサイトに蓄積されていったデータをもとに、 フィールドワークの成果を電車の中吊り広告のフォーマットでまとめることにしました。これは、何かの商品やサービスを「売る」ための広告ではありません。 創造性にあふれ、人びとを惹きつける場所の魅力(=場のチカラ)とは何か…。それぞれが、電車に沿ってつくられるまちのイメージを表現するのです。制作の途中で、プロの意見やアドバイスを聞き、中吊り広告を仕上げました。

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通常、フィールド調査の成果は、報告書やプレゼンテーションという形で公開されることが多いのですが、今回は、地域の人びとにより近いかたちで公開するために、電車を「移動ギャラリー」に見立てました。いつもの電車にゆられながら、ふとじぶんの暮らしているまちを想う。そのきっかけづくりになることを期待しています。

 

経験をまちに還す

まず、だれの「作品」が掛かっているか、事前にわからないので、乗って、探すだけで、予想以上にドキドキしました。できるだけ多くの「作品」を見るためには、途中で降りて次の電車を待ったり、すれ違う車両を眺めたり、ちょっとした工夫が必要ですが、じぶんたちのつくった中吊りが人目に触れている現場を、じかに見ることができます。江ノ電は、ぼくたち身の丈に合った、ちょうどいいスケールの「移動ギャラリー」だったのかもしれません。

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中吊り広告の姿をした調査報告書は、ごく自然に電車という空間にとけ込んでいました。「何の広告だろう?」と思う人はいても、こうしてフィールド調査の成果が、「中吊りギャラリー」に展示されていることには、気づかなかったはずです。通勤帰りの“お父さん”が、(知ってか知らずか)中吊りを見上げている姿 を見ると、ちょっと愉快な気分になりました。フィールドワークの経験は、ぼくたちの手許だけで活用するのではなく、現場に「還る」必要があるのです。*1

*1:この記事は、http://vanotica.net/enoden_gallery/ をもとに加筆・修正したものです。ほぼ原文のまま。