まちに還すコミュニケーション

場のチカラ プロジェクト|Camp as a participartory mode of learning.

師匠は「考えるな、感じろ」と言う(2)

Day 2: 出会う

2015年3月1日(日)

香港で目覚めたら、3月になっていた。いよいよ、スタート。歩いて15分ほどで、City University of Hong Kongに着いた。そして、Dr. Elaine Au (Department of Applied Social Sciences) をはじめ、City-Youth Empowerment Project (CYEP) のスタッフや学生たちとの顔合わせ。滞在中は、何度か一緒に行動することになっている。さっそく、それぞれの活動紹介やアイスブレーキング。CYEPの紹介で興味ぶかかったのは、その成り立ちや運用の仕組みだ。学部や専攻とは無関係に学生が集まっていて、だいたい週に5〜10時間くらい何らかのボランティアで香港のまちなかへ出かけて行く。たとえば一人暮らしのお年寄り、障がい者、少数民族の子供たちなど、行き先はさまざまだ。単位にはならない。むしろ、大学生による地域活動を(安易に)「単位化」しないというスタンスで全体が設計されているという(活動に関わる経費は大学が負担*1)。

今回は、ぼくたちのポスターづくりのプロジェクトに協力してもらうことになった。いろいろと調整していくなかで、ふだんおこなっている「キャンプ」のように、まちに暮らす「ふつうの」人びとを対象に取材をおこない、ポスターをつくるのはなかなか難しそうだった。そこで、CYEPの学生たちをとおして香港を知る…というやり方を試してみることにした。加藤研の学生と(ほぼ)同数の学生たちが参加してくれたので(全員が香港出身)、グループ(あるいはペア)に分かれて、まち歩きや施設訪問などの活動をしながら、インタビューをするというものだ。いつもよりは、時間に余裕があるので、可能であれば香港の学生たちに「地元」を案内してもらうこともできる。

オリエンテーションのあと、二手に分かれてキャンパスを案内してもらった。国内外を問わず、学会などの機会に他大学のキャンパスをぶらぶらすることがあるが、いつも楽しみなのは図書館だ。本の未来についてはいろいろ議論があるものの、図書館というのは、(とてもわかりやすい)〈知の集積〉なので、わずかな時間でも書架のあいだをぶらぶらして、利用者の姿を見るだけで、とても刺激を受ける。フィールドに出ること(フィールドワーク)はもちろんだが、図書館で過ごす時間(ライブラリーワーク)も大好きだ。どちらも大切。CityUの図書館は、なかなか素敵だった。座り心地のよさそうな大きめのアームチェアが、たくさんあった。

くわえて、キャンパスのビル(そして屋外)のいたるところに、机とイスが置かれているのが目についた(コンセントはあるし、当然、構内にWiFiは飛んでいる)。友だちとおしゃべりする。一緒に勉強する。食事をする。キャンパスのなかに、ちょっとした居場所があるというのは贅沢だ。偶然の出会いや再会も期待できるし、なにより、開放的だ。日曜日なのに(日曜日だから…?翌日に備えているのかもしれない)、キャンパスには、学生がたくさんいた。いきいきとしたキャンパスを見ると、元気になる。

そして昼食。ぼくたちが日ごろ通うキャンパスの、食環境の貧しさをあらためて痛感する。広い学食(フードコートのよう)はもちろんのこと、キャンパスのすぐそばには大きなショッピングモールもあるし、通りをはさんだところにある集合住宅(南山邨, Nam Shan Estate)のなかには、安く食べられる庶民的な食堂もあるそうだ。なにより、キャンパスのビルのなかに巨大なレストランがあるのには驚いた。日曜日の昼、飲茶を食べる人びとで賑わっていた。学生や大学関係者だけではなく、「ふつうの」人で席が埋まっている。ぼくたちも、その活気のなか、総勢25名ほどで食事をした。円卓を囲みながら、出会ったばかりのCYEPの学生たちと話をする。

https://instagram.com/p/zrDBMmpZfX/

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City Chinese Restaurant: http://www6.cityu.edu.hk/wayfinder/en/Venue/CCREST/

食事を終えて、こんどはみんなで南山邨(Nam Shan Estate)へ。キャンパスに隣接する集合住宅である。すでに書いたとおり、秋学期は「団地の暮らし」をテーマにフィールドワークをおこなっていたので、とても面白い。複雑で猥雑な、暮らしの一端を感じる。グループに分かれて、あたりを1時間半ほど散策。

 

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https://instagram.com/p/zrQ0yqpZSH/

ふたたび大学の教室に戻って、翌日の打ち合わせをした。だいぶ、打ちとけた雰囲気になってきた。

 

おまけ

どうやら、それほど心配する必要はなかったようだ。大学生は、しなやかだ。さっそく、知り合ったばかりの香港の学生たちと一緒にまちに出かけたり、あるいは翌日のランチの約束をしたり…。同じ大学生であること、そして朝から夕方まで一緒に過ごしていたということ。とにかく、相手とのコミュニケーションがなければ成り立たない一日だったので、おのずと距離が近くなったのだろう。

遅れて到着予定だった加藤研メンバーとも、無事に合流。ジョイスの案内で香港のまちをぶらついてから食事をして、最後はビクトリアハーバーへ。対岸のネオンを眺めながら、夜の香港の空気をたっぷり吸い込んだ。そして、師匠に会った。

(つづく)

*1:要確認