まちに還すコミュニケーション

場のチカラ プロジェクト|Camp as a participartory mode of learning.

ポスターをつくる

ポスターは不思議なメディアだ。写真を大きく引き伸ばし、ことばを添えただけのようにも見える。でも、なぜかポスターのなかの人に会いたくなる。まちを訪ねてみたくなる。*1

 

ポスターといえば、身近なところでは、駅貼りの広告を思い浮かべる。映画、新製品、旅行…。気になる商品やサービスが、ポスターとなってまちのいたるところに貼られている。だが、じぶんがポスターになる、などということはあまり考えないだろう。アイドルとなってデビューするとか、出馬するとか、そのようなことでもないかぎり、じぶんのポスターが待合室や市役所のロビーに貼られることはない。ポスターをめぐる故事来歴はともかく、ふだんの生活のなかで、じぶんとポスターとの関わりは、さほど意識することがないかもしれない。

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【フィールドワーク展X:じゅじゅじゅ(2014年2月, YCC・ヨコハマ創造都市センター) 】

 

人に近づく

私たちは、2004年ごろから全国各地を巡りながら、活気に満ちた場づくりについて考えてきた。もちろん、まちや風景に目が行くが、やはり人は魅力的だ。人が輝けば、まちも輝くにちがいない。そう考えて、どうやって人に近づくか、そして、その関わりをどのように形にするかについて、いろいろ試してみた。ふと思いついて、ポスターをつくってみたところ、これはとても愉しい!

まずは、ポスターのなかで人が息づくように、できるかぎり自然な表情をとらえるようにする。私たちは、写真については素人なので、そもそも「写真力」にはさほど期待できない。幸い、最近のデジタルカメラは優秀なので、高画質・オートに設定しておいて、とにかく近づいて撮るというのが基本方針だ。こちらが自然に向き合えば、和やかな雰囲気になる。〈撮る=撮られる〉というコミュニケーションが大切なのである。

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【きのくにの人びとのポスター展(2014年10月, トレイナート2014) 】 http://camp.yaboten.net/entry/2014/10/21/112852

 

ことばを添える

撮った写真を見ながら、訪れた先でのやりとりを思い出してみる。どのように語り、どのように笑い、あるいはどのように目を伏せたのか。印象に残ったひと言は何か。わずかな時間だったはずなのに、ふり返ると、じつに多くの事柄がよみがえる。ゆっくりと考えながら、ことばを選ぶ。そして文章を綴る。たった一人のためにポスターをつくるのだから、ラブレターを書くようなものだ。素直な気持ちを写真の上に載せていくと、ポスターが完成する。出会いを尊び、感謝する気持ちを忘れずに、気づいたこと、感じたことをそのまま書くだけでいい。

サイズ

サイズの持つ力も無視できない。最初に、家島(姫路市)でポスターを制作するプロジェクトをおこなったときは、A2サイズ(420×594mm)で出力した。それでも十分に大きいと思ったのだが、そのあとA1サイズ(594×841mm)でつくったら、その迫力に圧倒された。大きければいいというわけではないが、やはりパネルにして何枚も並べたときは壮観だ。それが愉快で、ポスターづくりのフィールドワークを企画しているのかもしれない。完成したポスターを貼り終えて、眺めるのは、じつに気持ちがいいのである。

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【彦根キャンプ(2014年6月)】 http://camp.yaboten.net/entry/2014/06/15/184708

一緒に眺める

じつは、大切なのはその先である。ポスターは、私たちを少しばかり饒舌にしてくれる。ポスターが〈話の種〉となって、あれこれ話をすることができるようになるのだ。前の日に出会ったばかりの人が、ポスターとなって壁に貼られている。それだけで、私たちのあいだの距離感が変わる。

ポスターは、私たちの〈関係性の表れ〉だ。人と人がまっすぐに向き合うことはもちろん重要だが、初めての場所で見知らぬ人と出会ったときには、気後れしたり、話題に困ったり、コミュニケーションはなかなか難しい。一度ポスターにして壁に貼り、それを一緒に眺めると、不思議と会話がはずむ。時には、涙を流す人もいる。

ちょっとしたコミュニケーションのために、わざわざ大判プリンターを動かしてポスターをつくるのは、いささか大げさに思えるかもしれない。だが、ポスターを眺めながら、まちの人と語るひとときは、悪くない。

◎参考:ポスター カテゴリーの記事一覧

 

*1:このテキストは、『まちに還すコミュニケーション:ちいさなメディアの可能性』(2011年3月)に収録されている内容に加筆・修正したものです。