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まちに還すコミュニケーション

場のチカラ プロジェクト|Camp as a participartory mode of learning.

中吊り広告をつくる

まちに還すコミュニケーション 中吊り広告

フィールドワークの成果をまちに還すことを考えながらあたりを見回すと、いろいろな陳列スペースが見つかる。公共スペースはもちろんのこと、電車やバスのなかも、人びととの接点をつくるギャラリーになる。*1

 

道路や鉄道は、地域のイメージをつくるのに重要な役割を果たしていることが少なくない。ときには、「エッジ」となって、そのイメージを分断することもあるが、場所に対する親しみやすさや愛情は、おそらく、私たちが考えている以上に、バスや電車などの交通機関と関係しているように思える。

なによりも、通勤や通学など、多くの人びとの毎日の「足」として、日常生活にとけ込んでいるからだ。私たちが、いつも眺めているあたりまえの風景は、こうした公共交通機関の路線と無縁ではないはずだ。

 

生活する人のスケール

フィールドワークを継続的におこなうためには、比較的コンパクトでわかりやすい現場(フィールド)をさがすのが望ましい。たとえば、路面電車は、地域差はあるものの、ほぼ徒歩圏内だと考えていいだろう。路線に沿ってまちを歩いてもいいし、車窓からまちを眺めて、気になる〈モノ・コト〉があったら、降りて歩いて見るのもいい。もちろん、駅(電停)や乗り降りする人の様子も、観察しよう。

徒歩圏内で、さらに線路という明快なルートを前提に調査対象となるエリアを設定すると、フィールドワークはずいぶんすすめやすくなる。

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【「湘南フィールドワーク(2007)」では、2か月半くらいのフィールドワークの成果を中吊り広告のフォーマットでまとめて、江ノ電車両(全28車両)に掲出した。→ 江ノ電フィールドワーク(中吊り広告)

 

「中吊り広告」という接点

通常、フィールドワークの成果は、論文や報告書、プレゼンテーションといった形で公開されることが多いが、まちの人びとにより近い形で公開するために、電車の車両を「移動ギャラリー」に見立ててみる。いつもの電車に揺られながら、ふと暮らしているまちを想う。そのための、まちの人びととの接点(コンタクトポイント)として、中吊り広告の可能性を感じるのだ。

電車の中吊り広告は、一般的にはB3サイズ(364×515mm)でつくられている(横長のサイズだと、幅が2倍になって364×1030mm)。大型プリンターさえ調達できれば、出かけた先ですぐに編集して、印刷することも可能である。電車の車両に吊り下げられることを前提としているので、やはり、部屋のなかではなく、動く電車のなかで、どのように見えるかを確認したい。車窓を流れる風景と、中吊り広告が一緒になって、あたらしいまちの理解を創造するのである。

ところで、中吊り広告という呼び方をしているが、私たちの場合、制作するのは何かの商品やサービスを「売る」ための広告ではない。創造性にあふれ、人びとを惹きつける場所の魅力とは何か。それぞれが、電車に沿ってつくられるまちのイメージを表現するのである。

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【「函館フィールドワーク(2007)」で制作した中吊り広告は、函館市電(530号)の車両広告として掲出された。2007年11月19日(月)〜12月2日(日)にかけて、一車両を借りきった「移動ギャラリー」として、函館のまちを走った。→ 函館フィールドワーク(中吊り広告)

 

電車をギャラリーにする

じぶんたちのつくった中吊り広告が、実際に人目に触れている現場を見に行くことも、重要かつ楽しい経験になる。電車が来るのを待って、乗り込んで、中吊りを探すだけでドキドキする。何両かに分散して掲出されている場合には、できるだけ多くの「作品」を見るために、途中で降りて次の電車を待ったり、すれ違う車両を眺めたり、ちょっとした工夫も必要になる。

中吊り広告の姿をした調査報告書は、ごく自然に電車という空間にとけ込こんで、路面電車は、私たちの身の丈に合った、ちょうどいいスケールの「移動ギャラリー」になる。「何の広告だろう?」と思う人はいても、こうしてフィールドワークの成果が、車内に展示されていることには、なかなか気づきにくいようだ。通勤帰りのサラリーマンが、(知ってか知らずか)私たちのつくった中吊りを見上げている姿を見ると、ちょっと愉快な気分にもなった。

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【「豊橋フィールドワーク(2008)」では、現場で成果を印刷し、そのまま特別車両に持ち込んだ。市電にゆられながら、フィールドワークの成果報告をおこなった。2008年12月1日(月)〜12月14日(日)にかけて、豊橋市電の車両内に掲出された。→ 豊橋フィールドワーク(中吊り広告)

 

◎参考:中吊り広告 カテゴリーの記事一覧

*1:このテキストは、『まちに還すコミュニケーション:ちいさなメディアの可能性』(2011年3月)に収録されている内容に加筆・修正したものです。