まちに還すコミュニケーション

場のチカラ プロジェクト|Camp as a participartory mode of learning.

exploring the power of place - 050

【本日発行】️ ついに50号。2016年5月に創刊してから5年(10セメスター)続けてきました。突然ですが、この節目で「休刊」となります。これまで、ご愛読いただき、ありがとうございました。
加藤研のウェブマガジン“exploring the power of place” 最終号(2021年2月20日号)のテーマは、「距離」です。→ https://medium.com/exploring-the-power-of-place/tagged/050

第50号(2021年2月20日号):距離(5)
  • モーツァルトからHIP HOP(芝辻 匠)
  • 最後の直線(田村 糸枝梨)
  • 人との距離感って難しい(巌真 風夏)
  • Being vegan, without being vegan (sorta)(牧野 渚)
  • 死に近いという感覚はワンテンポ遅れてやってくる(岩崎 はなえ)
  • 今日から私たちは、(安藤 あかね)
  • 「見えない」(藤田 明優菜)
  • 陽の当たるところ(山田 琴乃)
  • くっつかなくても、あったかい(中田 江玲)
  • ある女(飯盛 いずみ)
  • ⌘Shift3(太田 風美)

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「つきみててん」へ行こう。(3)

「声」だしていこう!

ずっと続けてきた展覧会。対面での実施を断念したときは、かなり落ち込みましたが、いや、どうにかなるだろう、どうにかしなくては、という前向きな気持ちになったのは、学生たちがなんとか元気に生きのびているからです。まぁ大変なことが起きているわけで、投げやりになったり迷ったりもしながら、「それなりに」学生たちとともに過ごしてきました。だから、「この研究は何の役に立つの」「どういう意味があるの」などと問うまえに、まずは、画面のなかで会えたことをよろこびましょう。
展示されているモノはともかく、コミュニケーションがあればこそ、やりとりのなかから、きっと何かが生まれます。ちょっと戸惑うかもしれませんが、すれ違ったら「こんにちは!」から。「声」だしていこう! という2日目の朝です(ビデオもオンにすると、楽しい場合もあります)。会場でお待ちしています。

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「つきみててん」へ行こう。(2)

 

かとう研の1年 編

ぼくたちは、フィールドワークやインタビューに代表される質的調査(定性的調査)を重視していますが、COVID-19の感染拡大にともない、方法そのものの再定義・再編成が必要となりました。とりわけ、人びとの暮らしに接近し、能動的にかかわりながらその意味や価値を理解しようという試みは、対面での「密な」コミュニケーションを前提として成り立っており、現在の状況下では、調査研究そのものが大きな制約を受けました。そのなかで、フィールドワークやインタビュー、生活記録のありようについてずっと考えていました。

学生たちとともに、全国のまちを巡る「キャンプ」の活動(ポスターづくりのワークショップ)は、すべて断念。春学期は、オンライン環境に慣れることも課題になりました。秋からは、注意しながら少しずつ「外」での活動を増やし、「非接触型」のフィールドワーク(観察とスケッチの実習)をおこないました。来年度も、人びとの移動、集まり、社交などのふるまいをとらえなおし、オンライン環境における質的調査について検討することも、大切な課題として位置づけています。
フィールドワーク展XVII:つきみててん」では、2020年度春学期・秋学期のおもな活動をウェブやビデオで紹介します。結果としては、ぼくたちにとって特別だった2020年 --- マスクをつけることが日常化したり、もっぱら画面越しにやりとりしたり --- が記録されたことになります。将来ふり返ったとき、〈いま〉のぼくたちの暮らしやふるまいを思い出すきっかけになるはずです。

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「フィールドワーク展XVII:つきみててん」は、オンラインで開催することになりました。詳細は https://vanotica.net/fw1017/ ほかで随時お知らせします。

2020年度春学期

ちょっと窮屈な毎日|It's a bit tight

(2020年6月):COVID-19の影響を受け、ぼくたちの日々の暮らしがどのように変容したのか、オンラインでインタビューをおこないました。オンラインによる調査の方法については不慣れなことばかりで、いろいろと試しながらでしたが、結果としては海外などもふくめ、多様な〈声〉を集めることができました。典型的な生活時間については、やはりそれぞれの場所での感染者数の状況を反映していることがうかがえる結果になりました。

A Day in the Life

(2020年7月)家にいる時間が増え、全員が集うことのない毎日。「7月25日」を指定し、その日の一人ひとりの生活の「細片」をビデオにまとめました。

2020年度秋学期

人びとの池上線|Every Person in Ikegami Line

(2020年10月)敬愛するJason Polanの方法をトレースしながら、東急池上線の各駅で観察とスケッチの実習をおこないました。「非接触型」フィールドワーク/ワークショップの試みです。駅を行き交う人びとの生態 -- とくに〈いま〉のマスクをつけた人びとのようす -- をとらえました。

人びとの池上線(スケッチ) - まちに還すコミュニケーション

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人びとの世田谷線|Every Person in Setagaya Line

(2020年11月)10月に実施した観察とスケッチの実習を(ほぼ同じやり方で)もう一度、東急世田谷線の各駅で実施しました。

人びとの世田谷線(スケッチ) - まちに還すコミュニケーション

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A Day in the Life 2

(2021年1月)ふたたび「緊急事態宣言」が発出されました。上述のA Day in the Lifeから、ちょうど半年。「1月25日」の一人ひとりのようすです。

このほかにも、ポスタープロジェクト(2009-)ジブンジテン(2009-)などの展示も計画しています(準備状況しだいですが)。

 

(つづく:次回は「卒プロ編」です。)

研究会を知るための手がかり(2021年2月)

研究会シラバス」に加えて、研究発表会や説明会、展覧会などが予定されているので紹介します。ショートノーティスになってしまいましたが、以下はすべてオンラインで実施されるので、うまくタイミングが合うようなら参加してみてください。

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2020年11月17日|研究会のようす

2月3日(水)9:00〜17:30ごろ 合同「卒プロ」発表会

ここ5年ほど、石川研、諏訪研、清水研、加藤(文)研の4研究会(研究室)合同で、学部生の「卒プロ」発表会を開いています。それぞれの研究会から2〜3名が、成果発表をおこなう予定です。担当者のこと、そして学生たちの具体的なプロジェクトについて知る機会になるでしょう。今年はオンライン(ZOOM)での開催になりますが、興味のある学生(keio.jp認証あり)は聴講可能です(途中で自由に出入りできます)。
https://forms.gle/5hFLcnJDnBB3tVCg6 

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2月4日(木)14:00〜 XD研究会説明会

XD(エクスデザイン)は、大学院(政策・メディア研究科)のプログラム名称で、“デザイン系”の教員を束ねた集まりです。当日は、それぞれの教員から活動内容や新年度からの履修について紹介があります。フライヤーをよく読んで、アクセスしてください(ZOOMによる開催)。

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2月5日(金)〜7日(日) フィールドワーク展XVII:つきみててん

毎年、2月の初めに年度の活動報告のための展覧会(フィールドワーク展)を開催しています(これまでに開催した「フィールドワーク展」リスト → https://fklab.today/exhibition)。学部生の「卒業プロジェクト」やグループワーク、フィールドワークなどの成果を展示して、1年間をふり返るための集まりです。
今年は17回目となりますが、残念ながらオンラインで開催することになりました。それでも、実際に加藤研のメンバーたちと、直接語らう機会になるはずです。くわしくは、https://vanotica.net/fw1017/ を参照してください。(オンライン開催にともない、事前登録をお願いしています)

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リンクいろいろ

その他、活動内容や日々の雑感についてはブログや研究室のウェブ、SNSなどで随時紹介しています。

「つきみててん」へ行こう。(1)

今年は、初のオンライン開催。

「つきみててん」によせて

また展覧会を準備する季節になった。いつも、冬の訪れを合図に「フィールドワーク展」に向けて慌ただしく動きはじめる。ずいぶん前から決まっていたはずなのに、なかなか準備がすすんでいなかったり、進捗がきちんと共有されていなかったり。学生たちに苦言を呈しながら、ドキドキしながら、不思議な高揚感とともに過ごす。毎年それをくり返して、17年目である。

そしていまは、ちがう意味でドキドキしながらこの文章を書いている。今年はCOVID-19の騒ぎで、ぼくたちの活動が大きく制限されることになった。そもそも、フィールドワークは移動が前提だ。じっとしているわけにはいかない。そして、人びとと語らい距離を縮めようとするのが基本だ。密度の濃いコミュニケーションこそが、フィールドワークを豊かで起伏に富んだものにする。でも、多くのコミュニケーションが画面越しの平坦なものになってしまった。

この一年近く、ぼくたちは窮屈な毎日のなかでも探究心を失うことなく、あれこれと工夫をしながら活動を続けてきた。「距離」について、あらためて考える機会にもなった。「フィールドワーク展」は、ぼくたちにとって大切な場所だ。じゅうぶんに注意をしながら、展覧会を開こうと思う。元気に生きのびていることを、見てほしい。

1月の満月の晩に、「つきみててん」のウェブが公開された。眩しくて綺麗な月だった。欠けたり満ちたり。あと2回満月を眺めたら、まもなく展覧会のはじまりだ。

2020年12月1日
加藤文俊

https://vanotica.net/fw1017/ より)

 ぼくたちは、毎年2月上旬に「フィールドワーク展」を開催しています。学部4年生・大学院生のプロジェクト報告や、学部1〜3年生のグループワーク、全国のまちを巡る「キャンプ」の試みなど、加藤文俊研究室の1年間の活動成果を報告する場です。2004年度に第1回を開催して以来、17回目となります(参考:これまでに開催した「フィールドワーク展」一覧→ http://fklab.today/exhibition)。

今回は「つきみててん」というタイトルで、展示の準備をすすめてきました。

そもそも、フィールドワークは身体全体で受けとめる体験なので、その成果はパネルにしたり展示台に載せたりできる性質のものではありません。しかしながら、あえて何らかの形をあたえることで、会話のきっかけをつくることができます。語られることによって、フィールドワークの体験が(不完全ながらも)再現されます。なにより、まちなかで展覧会を開くのは、フィールドで考えたこと・気づいたことは、ふたたびフィールドに「還す」べきだと考えているのです。

この時期に開催するのは、学期末・年度末というタイミングだからです。それは、多くの卒業生(何人かは9月に卒業)にとって大切な「節目」にあたります。つまり、ケジメをつけて修了・卒業しようということ。いっぽう、あたらしくメンバーとして参加を希望している・検討している学生にとって、加藤研の具体的な活動内容を知るよい機会になると考えています。
ぼく(ぼくたち)の活動については、書籍や論文をとおして知ることができます。大学で担当している授業(たとえば「フィールドワーク法」「リフレクティブデザイン」「インプレッションマネジメント」など)を受講すれば、基本的な考え方や人となりに直接触れることになります。もちろん、シラバス(https://camp.yaboten.net/entry/21s)には事務的なこともふくめ、あれこれと書かれています。
そして、このちいさな展覧会。会場にいる研究室メンバーとのコミュニケーションをとおして、ぼくたちの活動を近くで見てもらえればと思います。

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「フィールドワーク展XVII:つきみててん」は、オンラインで開催することになりました。詳細は https://vanotica.net/fw1017/ ほかで随時お知らせします。

 いうまでもなく、2020年度は特別な1年です。多くの場面で、フィールドワークやインタビューといった方法を用いながら活動してきたので、COVID-19によって動きを止められてしまいました。まちに出かけて人に会い、一緒に(食べたり飲んだりしながら)語らうことが、ぼくたちにとって大切な「方法」です。すべてが「密」を前提に成り立っている、というより「密」を生むための態度について学んでいたのです。春学期は、ぼく自身、とにかく苦しみました。

秋学期からは少しずつキャンパスに戻れるようになり、「非接触型」のフィールドワークを試していました。展覧会については、みなとみらい(横浜市西区)のBUKATSUDO(2015〜2017年度の会場です)を会場に決めて、じゅうぶんな感染予防対策を前提に、予約制で開催するつもりでいました。

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2016年2月6日:フィールドワーク展XII:こたつとみかん(BUKATSUDO)

しかしながら、新年早々にふたたび「緊急事態宣言」が発出され、それにともなって大学の「学外行事」にかんするガイドラインも書き換えられました。準備や設営などのことも考えると、やはり密度の高い状況をつくってしまうことになります。学生たちに注意する立場にいながら、ぼく自身も、やはりフェイストゥフェイスの場面では(これまで封じられていた分だけ)油断しておしゃべりに興じてしまいそうな気もします。結局のところは、それなりの人数が集うことになる。なかには不安に感じる人もいるはず。よくよく考えて、オンラインで開催することにしました。

これは、かなり苦渋の決断でした。学生はもちろんだと思いますが、ぼく自身もこれまで16年間続けてきただけあって、かなり凹みました。でも、展覧会を閉じるわけではなく、オンラインでもいきいきとした「場所」をつくれるのではないかと、気持ちを切り替えました。遠くに離れているみなさんにも、しばらくご無沙汰している人にも、オンラインだったら会えるのではないかと思いはじめています。だとすれば、ちゃんと宣伝しなくては…。

すでに「広報担当」の学生たちを中心に、Facebookのページ(https://facebook.com/fw1017)やInstagram(https://www.instagram.com/tsukimiteten_1017/)で展示内容の紹介がはじまっています。その内容と重複する部分もあると思いますが、ぼくの立場から、いろいろと大変だった1年間をふり返りつつ、「つきみててん」の見どころなどを書いていきたいと思います。

(つづく:次回は「かとう研の1年編」です。)

camp.yaboten.net