まちに還すコミュニケーション

場のチカラ プロジェクト|Camp as a participartory mode of learning.

仙台キャンプ

仙台で考える・つくる

全国のまちを巡る「キャンプ」は、続いています。COVID-19の影響下にあって、2019年の冬以降は、宿泊をともなう活動ができずにいましたが、6月から少しずつ制限が緩和され、およそ3年ぶりの「宿泊型」(1泊2日)です。
結局のところ、ここ2年間はがんばっても日帰りの活動で、この地図塗りもストップしていました(https://camp.yaboten.net/entry/area_index)。今回は仙台市(宮城県)に出かけることになったので、これで「東北地方」はコンプリート!です。* 下図は2019年12月


キャンプ|2004〜2019(2019年12月16日更新)

【きっかけ|つながりの系譜】「仙台キャンプ」は、これまでとはちょっとちがった趣向で、図書館ではたらく人びとを取材することになりました。2021年の秋(ふり返ってみたら、すでに1年近く前のことでした)、東北大学附属図書館の阿部さんからメールが届いたのがはじまりです。ぼくの『ワークショップをとらえなおす』(ひつじ書房, 2018)を目に留めていただき、職員研修(職員の企画・運営による職員のためのワークショップ)に講師として招かれました。同じく図書館の小林さんとともに、メールやオンラインで研修のすすめ方について調整・準備をしつつ、2022年1月末に「コミュニケーションの場をひらく:図書館が企画するこれからのワークショップ」というタイトルの研修が開かれました。ぼくは、仙台まで出かけていくつもりでしたが、残念ながらかなわず、オンラインでの実施になりました。

ぼくは、つねに「キャンプ」のことが頭にあって、宮城県が「未踏」であることもわかっていたので、研修を終えて間もなく、これはチャンスだと思って図々しく「キャンプ」への協力をお願いしました。もちろん、COVID-19の影響下にあって、さまざまな制約のなかで判断する必要がありましたが、ようすを見つつ、9月末であればだいじょうぶだろうという見込みで準備をはじめました。
その後、この「キャンプ」については、東北大学附属図書館本館の佐藤さんにご協力いただけることになり、実現に向けて具体的に準備をすすめることができました。9月8日に仙台まで行って、打ち合わせを済ませてきたところです。

「仙台キャンプ」では、図書館ではたらく人びとを取材し、翌日にポスター展と成果報告会おこなう計画です。じつは、最近課題図書として挙げたクリネンバーグの『集まる場所が必要だ 』(英治出版, 2021)のなかでも、図書館は大切な社会的インフラの一つとして描かれています。「コミュニケーションの場をひらく」という研修のテーマも、従来の図書館の役割や機能をとらえなおし、「ラーニングコモンズ」のような形で再構成するためのものだったと理解しています。当然のことながら、施設をつくるだけではふじゅうぶんで、図書館ではたらく人びとと利用者とのコミュニケーション(もちろん利用者どうしのコミュニケーションも)のありようについて、よく考えて工夫していく必要があります。
ぼくたちは、「図書館ではたらく人びと」というと、もっぱら窓口で直接かかわるスタッフのかたがたのことくらいしか知らないわけで、今回は少しでも「内側」に入ることをとおして、図書館そのもののイメージを改訂できる機会になればと思っています。

  • 日時:2022年9月26日(月)〜27日(火)(現地集合・現地解散)
  • 場所:仙台市(東北大学附属図書館 本館、工学分館、農学分館)
  • 参加メンバー(加藤文俊研究室):16名(学部生 14名・大学院生 1名・教員 1名)*9月12日現在

📢  プレスリリース:仙台キャンプ(フィールドワーク)について(2022年9月12日)→ https://vanotica.net/snd/pr_220912.pdf

スケジュール

9月26日(月)
  • 12:30ごろ 集合:東北大学附属図書館 本館(〒980-8576 宮城県仙台市青葉区川内27-1)*調整中。昼食を済ませて集合
  • 13:00〜15:30ごろ インタビュー(ペアごとに行動・取材先に応じて随時スタート):できるかぎり取材協力者の日常(仕事の現場)に接近して、その「生きざま」をとらえます。
  • 15:30ごろ〜* アイデア出し・デザイン作業(ペアごとに行動):インタビューで集めてきた素材をもとに、ポスターのデザイン/編集作業をすすめます。*15:30以降の作業場所については要調整
9月27日(火)
  • 00:00 ポスターデータ入稿:データ提出(時間厳守)
  • 8:30ごろ〜 ポスター印刷
  • 10:00ごろ〜 展示準備・設営 会場:東北大学附属図書館 本館
  • 11:00〜 「図書館の人びとのポスター展」
    (11:00〜 成果報告会 → ふり返りビデオ鑑賞・まとめと講評)
  • 12:00ごろ〜 片づけ・解散

写真は9月8日:上は青葉山キャンパスの図書館農学分館|下は「お約束」のやつ。

Day +1: 爆睡、のちふり返り

2022年8月21日(日)

日曜日はのんびり

「キャンプ土佐」に参加した高校生たちは、無事に家に帰り着いただろうか。昨日、道の駅(土佐さめうら)でみんなと別れてから、徳島に向かった。2時間ほどのドライブで、18:30ごろにはホテルにチェックインすることができた。
徳島駅の界隈をぶらぶら散策しようと思っていたのだが、近所で晩ごはんを食べていたら、急に眠くなってきた。おまけに、かなり湿度も高くて、夜の散歩はすぐにあきらめて、涼しい部屋に戻った。そして、ぐっすりと眠った。

曇り空。きょうは、ふたたびフェリーに乗って東京を目指す。ホテルを出るころには陽が差してきた。朝ごはんを食べて、身仕度をして出発。わずか20分ほどで沖洲港に着いて、手続きをしてからクルマと一緒に乗船(帰りは「どうご」だった)。ほどなく船は港を離れた。海は穏やかだ。

日曜日の昼。のんびりと船に揺られている。船内も、ゆるい雰囲気だ。行きと航路がちがうのだろうか、出航してからしばらくのあいだは電波が途絶えずにすすんでいた。例の自動販売機で昼食を調達して、船室の窓から海を眺めながら食べた。1時間ほど昼寝をして、今回の「キャンプ土佐」をふり返ってみた。

まず、たびたび書いているが、対面でのワークショップは3年ぶりだった。いまだにCOVID-19の影響下にあって、油断することはできない。というより、陽性者数はなかなか減らないし、実際にごく身近なところでも陽性者が急増している。そんななかで、対面で実施できたことを素直によろこびたい。しかも、今年は土佐町でのワークショップを担当することになり、いろいろと準備が必要だった。結局のところ、下見をする機会もなく、もっぱらSlackやZoomで連絡を取りながら準備をすすめた。
土佐町のみなさんいしやまの里協議会のみなさんの厚い(熱い)サポートがなければ、実現できなかっただろう。もちろん、大学の事務局にもかなりの負荷がかけてしまった(いろいろ、すみませんでした)。大学生もふくめ、じつに多くの人に支えられて「キャンプ土佐」が形になった。

そして、対面で集うことの価値をあらためて感じることができた。いま述べたとおり、リアルな場づくりには手間ひまがかかる。そのつもりで臨めば、かならずよい時間が流れる。しばらく「不要不急」ということばに翻弄され続けてきたが、高校生にとって、旅をして人と出会うことは「不要不急」どころか、「必要緊急」だったのではないか。出会いの実感には、(物理的な)移動が必要なのだ。

じつは大学生にとっても、よい経験になったと思う。いわゆる「合宿」についての制限は、6月ごろに緩和されたものの、この2年半はオンラインか日帰りの活動を計画するしかなかった。だから、ぼく自身も、学生と一緒に「アウェイ」な場所で寝食をともにするのは、2019年の12月以来のことだった。これまでずっと「あたりまえ」のように続けてきた宿泊型の実習(今回は、正確には高校生向けのイベントのサポートであるが)の雰囲気が、少しでも伝わっていればいいと思う。

ポスターというメディアが持つ力も、再認識した。やはり、A1を出力できるプリンターを調達してはこんで行ったのはよかった。あのサイズで「顔たち」が並ぶと迫力もあるし、みなさんが映る「鏡」のような役目もちゃんと果たすことができる。(いっそのこと、クルマに積んだまま印刷すれば、『顔たち、ところどころ』の気分が増すだろう。)

石川さんと石川研の学生たちと、同じプロジェクトで過ごすのも、じつは初めてだったかもしれない。同僚のこと、そしてふだん接することの少ない学生たちのことを知る機会にもなった。

だんだんと暮れてきて、夕日が海面を照らすようになったので、デッキに上ってみた。三宅島からの帰りの船も、こんな感じだった。ゆっくりと夜に向かってゆくのがわかる。ただし、三宅島からの帰りだと20:00ごろに竹芝桟橋に着くが、この船はあと10時間ほど航行する。
いまは電波の届かないところをすすんでいる。テレビをつけたら、『トータルリコール』がはじまった。なんと30年前の映画だった。

2022年8月22日(月)

* 追記 22日(月)の早朝、無事に東京(有明港)に到着。長かった。疲れているけど、ひさしぶりのリアルな「キャンプ」を体験して、元気になったような、回復に向かっているような、そんな感じがする。

Day 2: エモみ

2022年8月20日(土)

成果をまちに還す

5:30ごろ起床。今朝も涼しくて気持ちがいい。ちょうど7年前のきょう、つまり2015年8月20日は、仏生山温泉(高松)にいた(ことをSNSが教えてくれた)。その翌日には土佐山田町(土佐町じゃなくて)に向かって、クルマを走らせたのだった。

ポスターのデータは、無事にすべて揃っている。もう一度確認しながらファイルサイズなどを調整した。問題がなければ、1時間もあれば印刷できるはずだ。朝食まで少し時間があるので、外でのんびりしていると、サポート役で参加していた大学生が体調をくずすというハプニング。ちょっとドタバタしたが、病院へ行き、ひとまずだいじょうぶそうなので、ポスターの出力を開始。数枚を印刷したあたりで朝食になった。

朝食が終わると、学生たちはイスを並べ替えたりポスターを貼る位置を決めたり、展示の会場づくりをはじめた。このポスターづくりのワークショップで一番おもしろい(とぼくが思っている)のは、このちいさな展覧会だ。つまり、つくるだけでは終わらない(終われない)のだ。それぞれのポスターは、特定の一人のためにつくられたものだ。不特定多数に向けたメディアではなく、「送り手(つくり手)」と「受け手」が直接出会う。(個人的な)プレゼントやラブレターに近い。

生徒たちは、取材(というより、おしゃべり)をして、いろいろな話をもとに、ひと晩でポスターをつくる。もちろん、2時間足らずの話では一人ひとりの生きざまを詳しく知ることはできない。だが、わずかな時間でも、人の〈生〉は身体からにじみ出る。あるいは、家の佇まいやモノの置かれ方、設えも多くを語る。なにより、渓谷のなかの暮らしに少しでも身を置けば、全身がその〈生〉を受けとめるのだ。

膨大な情報がぎゅっと圧縮されて、1枚のポスターができる。できあがったポスターを見てもらうときのことを想像しながら、ことばを紡ぐ。だから、このちいさなポスター展は、あれこれ考えて準備したプレゼントの包みを、目の前で解かれるときのような気分にさせる。喜んでくれるだろうか。どんな表情になるのだろう。ちょっとドキドキする。


土佐町の「顔たち」|ポスターはこちら → https://camp.yaboten.net/entry/tosa2022_posters

たいていは、なごやかであたたかい時間になる。ときには涙する場面もある。1枚のポスターに凝縮されたさまざまな想いが、みんなの前で解かれるのだ。この「エモみ」のある時間は、いちど体験するとやめられなくなる。ぼくが、ポスターづくりのプロジェクトを10数年続けているのは、きっと、この成果発表会の時間が好きだからだ。

10:00ごろ、取材に協力いただいたみなさんが、「いしはらの里」に集まってきた。高校生たちは、ちょっと緊張の面持ちだ。ぼくは、「TOSA」とプリントしたTシャツ(今回のさまざまな準備や調整に敬意を表してつくった)を着て、成果発表会に臨んだ。
順番にグループごとに前に出て、仕上げたポスターを披露する。どのような時間を過ごしたのか、ポスターに詰め込んだそれぞれの想いを語る。ことばのえらび方、フォントへのこだわりなど、高校生たちは、みんな活き活きと話してくれた。一枚一枚、発表のたびに壁に貼る。少しずつ、壁がポスターで埋まってゆく。9枚のポスターが並ぶと、1枚のポスターだけではわからない「土佐町」が見えてくる。「顔たち」が並んで、ゆるやかにまとまるのだ。

発表が終わり、しばらくポスターの前で談笑する時間があって、最後は「記録班」によるビデオの上映会だ。いうまでもないことだが、高校生たちは全国から集まってきて、この「土佐キャンプ」で出会い、土佐町の暮らしにもはじめて触れた。取材をしたのは、つい昨日の午後のことなのだ。出会いからポスター展までに流れた濃密な時間を、5分ほどのビデオを観ながらふり返る。

◉撮影・編集:池本次朗・河井彩花・武谷梨紗子

ビデオの上映が終わって、記念写真を撮った。余韻に浸っていると、お昼になった。「いしやまの里」での最後の食事はカレーだった。そのあとは、簡単なふり返りと事務連絡などを経て、ふたたびバスで空港やJRの駅へ向かう。

じぶんではごく自然にしていることなので、あまり意識したことがなかったのだが、石川さんに言われてあらためて気づいた。ぼくは、いつでも「エモみ」が豊かな場所のつくり方を、あれこれと工夫しているのかもしれない。「TOSA」のTシャツも、寄せ書きも、ちょっとしたことのようだが、たしかに素直な感情を詰め込んでいるのだ。

ぼくは、みんなで最後に立ち寄った道の駅(土佐さめうら)から2時間ほどのドライブ。今晩は、徳島に泊まる。

キャンプ土佐(ドキュメント)

ビデオでふり返る

2022年8月19日(金)から20日(土)の成果報告会までを記録した、ダイジェストビデオです。このビデオは、20日(土)の成果報告会のなかで上映しました。
(ポスターはここ → https://camp.yaboten.net/entry/tosa2022_posters

◉撮影・編集:池本次朗・河井彩花・武谷梨紗子


2022年8月20日(土)成果報告会のようす(集落活動センター いしはらの里)写真提供:羽賀優希

キャンプ土佐(ポスター)

ポスターをつくる

土佐町(高知県)で実施した「土佐キャンプ」(未来構想キャンプ2022)では、9名のかたがたにインタビューをおこない、ひと晩でポスターをつくりました。“ポスター展のポスター”をふくめて10枚。ご協力いただいたみなさん、ありがとうございました。

土佐町の人びとのポスター展
  • 会期:2022年8月20日(土)10:00ごろ〜
  • 会場:集落活動センター いしはらの里(〒781-3334 高知県土佐郡土佐町西石原1228)
  • 成果報告会:2022年8月20日(土)10:00〜 成果報告会をおこないます。(報告のあと、ふり返りビデオ鑑賞・まとめと講評) 成果報告会は終了しました。ありがとうございました。