まちに還すコミュニケーション

場のチカラ プロジェクト|Camp as a participartory mode of learning.

美波キャンプ(ドキュメント)

ビデオでふり返る

2024年5月24日(金)から26日(日)の成果報告会までを記録した、ダイジェストビデオです。このビデオは、26日(日)の成果報告会のなかで上映しました。

◉撮影・編集:小田 文太郎・黒木 郁也

2024年5月26日(日)成果報告会のようす(谷屋)

Day 2: フィールドワークとカレー 🐢

2024年5月25日(土)

いよいよ「美波キャンプ」のはじまり。ケアンズ(駅前のビジネスホテル)で目覚めた。調べたら、うみがめつながりで、美波町(旧 日和佐町)とケアンズ市(グレート・バリア・リーフの「玄関口」)は、姉妹都市を締結していることがわかった。すでに、2019年には締結50周年を迎えているようだ。よく晴れていて、きょうは、暑くなりそう。集合時間までまだ余裕があるので、大浜海岸まで行ってみた。

9:45ごろに谷屋に集まって、段取りの確認。名札やおみやげを配って、準備をした。約束の時刻が近づいてきて、学生たちはペアになって、それぞれの取材先に向かって出発した(一部のペアについては、谷屋で落ち合う)。

この「キャンプ」の試みは、すでに20年くらい続けているが、事前の準備がそれなりに大変だ。おなじ場所に通いつづけるような「実習」を組み立てるなら、少しずつなじんでいき、人びととの関係を深めてゆくことができる。しだいに地理感覚も養われるし、「見えない」ルールや土地の慣習も学ぶことになる。たまに行く「訪問者」であったとしても、なんとなく見留めてもらえるはずだ。
でも、ぼくは全国のいろいろなまちを巡ろうという方向性をえらんだ。そのため、いつも、出かける先はほとんど手がかりのない場所で、しかも2泊3日程度の滞在中に成果をまとめることになる。おなじ活動のくり返しだが、毎回、行った先々ではあたらしい気分で過ごす。

ただ、その準備にエネルギーと時間を使っておくと、「本番」は上手くいくように見守るだけになる。もちろん、なんかあったときには動けるようにしているが、丁寧に準備をしておけば、時間的にも心理的にも余裕が生まれる。今回は、午後にカレーをつくると決めていたので、「キャンプ」に参加する大学院生2名を「カレー要員」に任命し、さらに今回の「美波キャンプ」のことを聞いて訪ねて来てくれるという神山町の友人たちのこともあてにしつつ、5名でカレーをつくる計画だった。

まずは、かんちゃん(神社さん)から、「たまねぎがあるよ」とのメッセージをもらっていたので、畑に。にんにく、パセリ、ローズマリーもいただいた(カレーに使うたまねぎは買わずに済んだ)。昼頃に神山町の友人が到着し、うどん(やくよけうどん)を食べてから、買い出し。今回は、「うみがめラボ」という施設のキッチンを借りることができた。本当に気持ちのいい日で、開放的なキッチンを風が抜けてゆく。すぐそばにグラウンドがあって、野球をする声を聞きながら、カレーをつくりはじめた。

調理がはじまると、学生たちの取材やポスター制作のことは頭から離れてしまう。たまねぎをひたすら炒めて、スパイスの香りを吸い込みながら過ごす。こどもたちの野球に同行していたお父さんが「ここはお店ですか」とたずねてきた。カレーのにおいが風に乗って、グラウンドまではこばれていたのだろうか。17:00ごろにカレーが完成。ほどなく学生たちがやって来て、外にあるベンチに腰をおろしてカレーを食べた(カレーのことについては、別途まとめる予定なので、ここではこのくらいで…カレーの写真もあえて載せずにおく)。

片づけを終えて谷屋へ。畳の間で、みんなが作業をしている。この光景もひさしぶりで、懐かしい気分になる。PCの画面を二人でのぞき込みながら、ポスターづくりをすすめている。
すっかりカレーのモードになっていたが、プリンターのチェックのことは忘れていなかった。今回は、クルマに大判プリンターと調理器財を載せて来た。荷室はいっぱいだが、プリンターはクルマに載せたままポスターを印刷できる(ようになっている)ので、谷屋の駐車場で試しにポスターを印刷してみた。無事に動いたので、あとは、ポスターのデータが完成するのを待つだけだ。

「キャンプ」のあいだは、「待つ」ことが多い。鍋のなかのカレーは、しばらく待っていると味が決まってくる。ポスターもおなじだ。時間をかけていると、少しずつ整ってゆく。急いで仕上げようとせず、ゆっくり「待つ」こと。それは、そのあとが楽しみだからだ。
谷屋の利用は、22:00までと決まっていたので、ひとまず解散。すでにいくつかのポスターのデータは提出されている。ぼくは、ケアンズに戻って、データが揃うのを待つことにした。きょうは、朝からよく動いた。

やすらぎ - 日和佐/うどん | 食べログ

Day 1: 美波町へ 🐢

2024年5月24日(金)

5:30くらいに起床。海は穏やかだ。さっそく浴場へ。朝早いからか、誰もいない。フェリーで(つまり洋上で)湯船に浸かるのは、なかなかいい(しかも今朝は独り占めだ)。肩まで浸かると、目の前の窓の外には大海原。そして、景色が動いている。船の揺れもあるから、浴槽のお湯も波打っている感じで面白い。少しずつ、晴れてきそうな空だ。

そして朝食。このフェリーにはレストランがない。そのかわり「オーシャンプラザ」というエリアがあって、自動販売機がずらりと並んでいる。2年前に乗ったときにも驚いたが、フェリーに乗っている間は、自動販売機と電子レンジと給湯器に頼ることになる。なかには、ふだんはあまり見ることのないレトルト食品(冷凍食品)もある。とんでもなく美味しいということもないが、迷うくらいの数のメニューが並んでいるし、いちいち両替をして(現金しか使えない)、まちがえないように慎重にボタンを押す感じは、わりと楽しい。そして、行儀よく電子レンジの列に並ぶ。朝食はコーヒーとパンで簡単に済ませた。

この自販機コーナー(オーシャンプラザ)は、どうやら「フェリー飯」としてテレビで紹介されたようで、派手なポップで覆われていた(こんなにカラフルだったっけ…と思って2年前に書いたブログを見たら、何の飾りもない自販機だった)。やはり食べることは大事なわけで、この自動販売機の周りには人がたくさんいる。電波もないし、船に揺られているあいだは、のんびり身を任せておくしかない。みんな、飲んだり食べたり(眠ったり)しながら過ごしている。右舷には、ずっと陸が見えている。おそらくは和歌山県沖だ、と遠くを眺めながら、数年前に串本に行ったことを思い出した。
とりあえず15巻ほど(全33巻のうち)船内に持ち込んだ『団地ともお』は、ほとんど読めなかった。いま、団地の調査をすすめているので、書籍や論文だけではなく、団地が舞台になっている映画や漫画などを読んでいる。船の18時間でたくさん読もうと思っていたが、2巻まででストップ。全巻読み終えるには、もうしばらく時間がかかりそう。

ほぼ定刻どおり(13:20ごろ)徳島港に到着。そこから美波町を目指す。道はすいていて、途中からは3月の下見のときに運転した道(そのときはレンタカー)だったので、ちょっと懐かしいような、「ただいま」のような気持ちでドライブした。15:00前には日和佐駅に着いた。ちょうど、徳島駅から到着した学生たちに出くわしたので、一緒に谷屋(たんにゃ)まで歩いた。
谷屋は、由緒ある旧廻船問屋で、いまはその一部が「地ビール地域活性化プロジェクト事業」の拠点として、整備がすすめられている。今回は、ご縁があって、谷屋を作業スペースに使わせていただけることになった。地ビールの事業は秋くらいに本格稼働とのことだが、すでに準備はすすんでいて、醸造用のタンクがあったり、土間には冷蔵ショーケースや冷凍庫が置かれていたり、ビール瓶が並びはじめたら、ここが楽しい場所になることはまちがいない。

16:30に谷屋に集まったのは、参加メンバーの半数くらい。一人ひとりが、それぞれの都合と経路で美波町までやって来た。大まかに土・日の流れを確認をして、そのあとは、それぞれでまちに散って夕食。あらかじめ、いくつかオススメの店を聞いておいた。まだ到着していない学生もいるが、実質的には明日の朝から動くので、こんな感じでいいのだろう。まだ明るいうちから食事をして(ぼくたちは、開店と同時に店に入った)、少しゆっくりと過ごして、これからの2日間のための鋭気を養うということだ。1軒目は、下見に来たときにランチを食べた店へ。そして、2軒目へ。しめは、醤油ラーメン。

ひわさ屋 - 日和佐/日本料理 | 食べログ

平和園 - 日和佐/居酒屋 | 食べログ

Day 0: 月夜にはじまる 🐢

2024年5月23日(木)

出発の日というのは、朝からそわそわする。荷物をまとめて、忘れ物がないかチェックする。19:00出航なので、時間には余裕があるはずなのに、焦りと、それ以上に高揚感があって、結局、家を出る間際までドタバタしていた。クルマがあると思うと、つい荷物が多くなってしまうのだ。

2度目の「フェリー どうご」である。2年前の夏、土佐町(高知県)で高校生向けのワークショップをひらくことになり(→ キャンプ土佐)、そのときもフェリーで徳島に向かった。当時はまだ新型コロナウィルス感染症の影響下にあって(いまでも、もちろん注意は必要だが)、対面でワークショップを実施するにあたっては、気を遣うことが多かった。ましてや高校生たちを「お預かりする」立場なのだから、なおさらのことだ。思えば、みんなマスクをして、食事の時間には黙って食べていた。
フェリーで出かけた理由は、大判プリンターをはこぶためだった。少しずつ移動が許されるようになり、ずっと続いていた「ステイホーム」の窮屈さへの反動もあったと思う。わざわざフェリーに乗って遠くまでプリンターをはこぶなんて、と思いつつ、高校生たちと一緒にポスターづくりのワークショップをするのだから、大判プリンターでいつものようにA1サイズで出力したい。そう思った。現場にプリンターがないなら、はこべばいいのだ。
大好きな映画『顔たち、ところどころ』(2017)のように、行った先々で大きく印刷するのは楽しい(2年前にも同じようなことを書いた)。その後、仙台や浜松でのワークショップのさいにも、プリンターを載せて出かけた(大判プリンターは、ポータブル電源で問題なく動かせることもわかった)。

2024年になって、ずいぶん自由に動けるようになった。いろいろなことが、少しずつ、5年前のころに戻りつつある。今回は、徳島県の美波町(日和佐)で、ポスターづくりのワークショップ(キャンプ)をおこなうことになり(→ 美波キャンプ)、いろいろ考えて、クルマで(フェリーで)移動することにした。まず、12年間乗ったクルマ(170,000キロ走った)を手放して、あたらしいクルマに買い換えたので、とにかくクルマに乗りたい(納車直後あるある)。そして、しばらく休んでいた「カレーキャラバン」も「カリーキャラバン」として、あらたに活動をはじめたばかりだ(旅先で調理するのはひさしぶり)。さらに、今学期はサバティカル(特別研究期間)をいただいているので、ずいぶん気楽だ。この状況なので(三拍子そろったような?)、クルマには大判印刷のできるプリンターと、カレーのスパイスと調理器具一式を載せて出かけることにした。もはや飛行機で身軽に、というわけにはいかない。

船のスピードはいい。有明港を出ると、徳島港までおよそ18時間。のんびりと揺られながら過ごす。19時。定刻どおりに出航した。デッキに上がると、とても美しい夕空だった。原稿の続きを書くつもりだったが、あの夕陽を見たので、ビールにした。日付が変わるころには電波が届かなくなる(2年前に体験済み)。
電波がなくなると、切断された気持ちよさのようなものがあって、あとは、月に照らされる静かな海をぼんやりと眺めるだけだ。海は穏やかで、船は大きくは揺れない。横になると、小刻みな振動が背中から伝わってきて、眠りに誘われる。

美波キャンプ(ポスター)

ポスターをつくる

(2024年5月22日)ページを公開。26日(日)の成果報告のあとで更新します。

(2024年5月26日)今回は、9名のかたがたにインタビューをおこない、ひと晩でポスターをつくりました。“ポスター展のポスター”をふくめて10枚。取材にご協力いただいたみなさん、ありがとうございました。

美波の人びとのポスター展
  • 日時:2024年5月26日(日)12:30〜14:30ごろ
  • 会場:谷屋(たんにゃ)(〒779-2304 徳島県海部郡美波町日和佐浦184)
  • 成果報告会:2024年5月26日(日)12:30〜 成果報告会をおこないます。(報告のあと、ふり返りビデオ鑑賞・まとめと講評) 成果報告会は終了しました。ありがとうございました。

【5月26日(日)|成果報告会のようす(谷屋 たんにゃ)】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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