2022年8月18日(木)
土佐町へ
5:30ごろ起床。しばらく、窓の外に広がる海と空を眺めていた(ずっと見ていても飽きない)。三重県の沖あたりだろうか。電波がないので、スマホのチェックはなし。いわゆるデジタルデトックスというやつだ。船内はとても静かだ。みんな眠っているのか、そもそも利用客が少ないのか。シャワーを浴びて、しばらく本を読む。あと7、8時間はこのスピードですすむ。
このフェリーを利用するのは、今回が初めてだ。乗船のときにはクルーに迎えられたわけだが、あとはほぼすべてが自動販売機に委ねられている。船上の愉しみのひとつが食事なのに。COVID-19の影響でいろいろ変わったのかもしれない(今回乗ったのは「びざん」)。「オーシャンプラザ」には、冷凍食品(レトルト)の自動販売機と電子レンジが並んでいる。おつまみ、麺類、ごはんものなどなど、種類は豊富だ。もちろんビールもアイスも、三宅島に通っていた頃に「定番」だったカレーヌードルも買える。浴室のそばには、シャンプーやパンツ、サンダルの自動販売機もある。
海を眺めながら、朝ごはんを食べた。風が強いみたいだ。しばらくして、船の揺れが気になりはじめた。ほとんど乗り物酔いはしないのだが、ちょっとうねりが強くて、ベッドに横になった。午前中は、本を読んだりごろごろしたり、のんびりと過ごしていた。お昼過ぎに、ようやく電波が入るようになって、メールを確認した。およそ12時間ほどスマホを使わなかっただけなのに、すごく大変な経験をしたような気になった。
13:30ごろ、ほぼ定刻に沖洲港(徳島県)に着いた。そして、土佐町を目指す。だいたい150キロくらい。ナビによると、今回の会場となる施設「いしはらの里」まで2時間ちょっとのドライブだ。徳島自動車道〜高知自動車道を経て、大豊(おおとよ)ICを出ると、あとは目的地まで一本道だ。吉野川に沿ってカーブをくり返しながら、渓谷をすすむ。木々の緑がとても美しい。30℃をこえているが、東京の30℃とはちょっとちがう。窓を開けると、涼やかな空気が入ってくる。
ワークショップの会場(+宿泊施設)となる「いしはらの里」は、廃校になった小学校(旧石原小学校)をリフォームして「集落活動支援センター」として整えた施設だ。さまざまなイベントが行われていて、数年前から宿泊事業もはじめたという。シャワーやエアコンなど、綺麗に整備されているが、小学校の風情はちゃんと残っている。図書室も教室も、誰もが懐かしさを感じるにちがいない。元図書室、元教室に布団をしいて寝ることになる。
今回お世話になる町田さん、森野さんと少し話をしているうちに(じつは、ぼくよりも早く到着した石川さんが、すでに細かい打ち合わせを済ませていた)、近所を散策中だった石川さんと三宅さん(前泊のSA)が戻ってきた。
まずは、はるばる連れてきたプリンターを部屋に運んでテストした。精密機器なので、来る途中に何かあったら明日からのワークショップが台なしになる。梱包を解いて、電源を入れる。無事に印刷できたのでひと安心だ。陽が落ちると、ずいぶん涼しくなる。
晩は「いしはらの里」で、地の食材をつかったメニュー。どれも美味しかった。この施設が、集落の人びとによって支えられていると聞いて、素晴らしいことだと思った。実際に使いながら、みなさんが工夫や改修を重ね、少しずつ「いしはらの里」が魅力のある場所に育っているようだ。食堂から、体育館で空手(だと思う)の教室がおこなわれているのが見えた。親御さんの迎えのクルマが数台、終わるのを静かに待っている。
食後は受付の段取りを考えたり、グループ分けを思案したり。他の会場の先生がたとZoomでつないで、ようすを報告しあった。明日は、いよいよ参加者を迎えてワークショップがおこなわれる。じぶんで望んで計画したとはいえ、家を出てから船で17時間、そのあと2時間のドライブを経て、会場にたどり着いた。長い道のりだった。まだはじまっていないのに、もう達成感がある。