更新記録
UPDATED
(2026年8月13日)「2026年度秋学期の予定 - キャンプ」に追記しました。履修予定のひとは、日程を確保しておいてください。
(2026年8月7日)「2025年度春学期のおもな活動」を追記しました。
(2026年8月6日)「2026年度秋学期の予定」に追記しました。
(2026年7月29日)「A Life in a Day 13」(動画)をアップしました。7月25日(土)の加藤研メンバーの動きがわかります。
(2026年7月24日/25日)「研究会の履修について」を加筆し、もくじの構成を変更しています。秋学期の履修に必要な課題は、〔1〕新規履修〔2〕継続履修・その他 の種別があるので、よく読んでからすすめてください。
(2026年7月10日)「2026年秋学期の予定」を加筆しました。
(2026年6月20日)シラバス(詳細版)入力中です。随時更新するので、マメにチェックしてください。

※ 加藤研メンバー(2026年6月20日現在):大学院生 12名(博士課程 2名・修士課程 10名)・学部生 19名(21名)(4年生 7名(9名)・3年生 6名・2年生 6名)
大学のオフィシャルサイトにある「研究会シラバス」をかならず確認してください。
もくじ
はじめに
ぼくたちは、絶えずコミュニケーションしながら暮らしています。
ワツラヴィックらは、『人間コミュニケーションの語用論』(二瓶社, 2007)のなかで「コミュニケーションにおけるいくつかの試案的公理」について述べています。その冒頭に挙げられているのが、「We cannot NOT communicate(コミュニケーションしないことの不可能性)」です。つまり、ぼくたちは、いつでも、どこにいても、コミュニケーションせざるをえない。非言語的なふるまいはもちろんのこと、沈黙もまたメッセージであることに、あらためて気づきます。
そして、コミュニケーションについて考えることは、(いつ・どこで・だれが)集い、(何を・ どのように)語らうのかを考えることだと理解することができます。つまり、コミュニケーションへの関心は、必然的に「場所」や「場づくり」への関心へと向かうのです。この研究会では、コミュニケーションという観点から、人びとの「移動」や人びとが集う「場所」の成り立ち、「場づくり」について実践的な調査・研究をすすめています。
いま述べたとおり、人と人とのコミュニケーション(ヒューマンコミュニケーション)が主要なテーマです。既存の学問分野でいうと社会学や社会心理学ということになりそうですが、ぼく自身は、学部を卒業後は「コミュニケーション論/コミュニケーション学」のプログラムで学びました。
何が起きるかわからない…。ぼくたちは、変化に満ちた時代に暮らしています。とくにCOVID-19の影響下では、これまで「あたりまえ」だと思っていたことを諦めたり手放したりする場面にいくつも遭遇しました。哀しい出来事にも向き合い、また不安をかかえながら不自由な毎日を強いられることになりました。でも、そのような不安(あるいは不満)、問題に向き合いながらも、明るくてエネルギッシュな人びとが、確実にいるということにも、あらためて気づきました。そこに、「何があっても、どうにかなる」という、人びとの強さを感じ ます。また、諸々の課題に向き合いながらも、ぼくたちを笑顔で迎えてくれる優しさにも出会います。それが、リアルです。
この圧倒的なパワーを持って、ぼくたちの目の前に現れるリアリティに、どう応えるか。それはまさにコミュニケーションにかかわる課題であり、ぼくたちが「研究会」の活動をとおして考えてゆくべきテーマです。お決まりの調査研究のスキームに即して、「報告書」を書いているだけでは、ダメなのです。つぶさな観察と、詳細な記録、 さらには人びととのかかわり(ときには、長きにわたるかかわりの「はじまり」に触れていることもある)をもふくめたかたちで、学問という実践をデザインすることに意味があるのです。
ぼくたちの活動は、たとえば「まちづくり」「地域づくり」「地域活性」といったテーマと無縁ではありません。でも、いわゆる「処方箋」づくりにはさほど関心がありません。 そもそも「処方箋」などつくれるのだろうか、と問いかけることのほうが重要だと考えます。「ふつうの人びと」の暮らしにできるかぎり接近し、その強さと優しさに光を当てて可視化するのです。そこまで行ければ、じゅうぶんです。あとは、人びとがみずからの暮らしを再定義し、そこから何かがはじまるはずです。ぼくたちのコミュニケーションのなかにこそ、たくさんのヒントがあります。
研究会の履修について
2026年度秋学期に「研究会」の履修を希望するひと
何度かやりとりしながら、履修者をえらびたいと思います。ちょっと面倒かもしれませんが、お互いのためです。結局のところは「えらび、えらばれる」という関係が大事だからです。まずは、シラバスをよく読んで(文献なども参照しつつ)、履修するかどうかを決めてください。
〔1〕新規履修:2026年度秋学期がはじめてのひと
❖課題
まず、ケネス・ガーゲンの『関係の世界へ:危機に瀕する私たちが生きのびる方法』(2023)を読んでください。
本の内容を身体に取り込んだら、文章を書いてみてください。「身体に取り込む」というのは、本に書かれた内容が、みずからのふるまいや態度にどのような影響をあたえた(あたえうる)かについて自覚的になるという意味を込めています。本に出てくる概念を復唱したり、安易に援用したりすることではありません。もちろん、本の内容をすべて受け入れる必要もありません。『関係の世界へ』では、教育、セラピー、医療、組織、紛争などの領域に「関係の視点」を適用しようと試みています。
あなたにとって、考えずにいられない「関係の世界」はどのようなものでしょうか。できるかぎり具体的な、じぶんの身近な問題意識のもとで、「関係の世界へ」というタイトルの文章を綴ってください。
❖提出について
- わかりやすい丁寧な日本語で、秩序立てて書いてください。
- 1000〜1200字程度、PDF形式にファイルを書き出してください。
- K-LMSの「課題」からファイルをアップロードしてください。
❖提出期限
2026年8月17日(月)23:59
提出された文書を確認の上、面談の日程調整をします。
〔2〕継続履修・その他:継続を希望するひと/これまでに「研究会」を履修したことのあるひと
2026年度春学期に「研究会」を履修しているひと・それ以前に「研究会」を履修したことがあるひと:以下をよく読んで、期限までに文書を提出してください。かならず、K-LMS経由で提出すること(それ以外は受け付けません)。
❖課題
これまでのじぶん自身の「研究会」での活動をふり返って、また「戻りたい」と思う場面を、具体的に回想してください(「戻りたい」と思う事情や理由は、じぶんで判断してください)。
現実的に、過去に逆戻りすることはできませんが、もし仮にその「戻りたい」場面から、もう一度、活動をおこなうとしたら(=つまり、2回目があるとしたら)、どのようにふるまいたいと考えますか?
- 「戻りたい」のは、どのような場面なのか、できるかぎり具体的に記述してください。
- なぜその場面に「戻りたい」のか、そのときの状況や心情を(可能な範囲で)語ってください。
- その上で、もう一度、その場面に立ち戻ってから「研究会」での活動を続けるとしたら、どのようにふるまいたいと考えますか?その結果として、「いま」はどのように変わっていると思いますか? できるかぎり具体的に記述してください。
❖提出について
- わかりやすい丁寧な日本語で、秩序立てて書いてください。
- 1000〜1200字程度、PDF形式にファイルを書き出してください。
- K-LMSの「課題」からファイルをアップロードしてください。
❖提出期限
2026年8月17日(月)23:59
提出された文書を確認の上、面談の日程調整をします。
2026年度春学期のおもな活動
すべてを網羅することはできないのですが、活動のタイプは大きく3つに分けて整理することができます。(1) 研究会メンバー(ときには大学院生もふくめて)全員で取り組むもの、(2) グループワーク(学部1〜3年生)、(3) 卒業プロジェクト(4年生)の3つです。
「研究会」は1週間に1回(2コマ続き, 180分)で開講しています。くわえて、週末にフィールドワークやワークショップ(「キャンプ」)をおこなったり、それぞれの計画に応じてグループワークをすすめたりします。
研究会メンバー全員の取り組み
たとえば2026年度春学期は、研究会メンバー全員での取り組みとして、以下のような活動をおこないました(計画中のものをふくむ)。
(1)京丹後キャンプ(2026年5月)
47都道府県の踏査を目指して、20年近く前にはじまった「キャンプ」というワークショップ型のフィールドワークはいよいよ「コンプリート」を迎えました。今学期は京丹後市(京都府)を対象地に2泊3日の「キャンプ」を実施しました(ダイジェストビデオを観ると、雰囲気が伝わるはずです)。

◉撮影・編集:須永 こころ・谷口 真悠・西田 奈々緒

(2)A Day in the Life 13(2026年7月)
〈ある一日〉を決めて、その日の一人ひとりの生活の「細片」をビデオにまとめるプロジェクトです。もともとは、リドリー・スコットらのプロジェクト「Life in a Day」(2010, 2020)に触発されて、2020年7月から半年ごとに実施しています。
以下は「A Day in the Life 13」(2026年7月25日)です。
【A Day in the Life 13】2020年7月25日から、半年ごとに続けているプロジェクトです。みんな、ばらばらだけど一緒・一緒だけどばらばら。今年の7月25日(土)の加藤研メンバーの日常の“細片”を集めました。https://vimeo.com/1213777550?share=copy&fl=sv&fe=ci
(3)田辺キャンプ2(2026年9月)(特プロ実施予定)
現在、詳細については調整中ですが、9月中旬に田辺市(和歌山県)でポスターづくりのワークショップを計画しています。
グループワーク(学部2-3年生)
2026年度春学期は“シン 大東京案内”というテーマでグループワークをすすめています。成果は、冊子にまとめたりウェブで公開したりするほか、ORF(2026年11月)や「フィールドワーク展XXIII」などで展示する予定です。→ ウェブ (準備中)





グループワークについての考え方については、これも参考になります。
フィールドワークの課題をデザインする - まちに還すコミュニケーション
卒業プロジェクト(学部4年生)
2027年3月に卒業予定の4年生は、6名です。それぞれの「卒業プロジェクト」については、2027年2月に開催予定の「フィールドワーク展XXIII」で展示されます。
-
「卒プロ」のまとめ(2026年春学期)
- 「社会人」との距離を考える(須永こころ)
- 地獄でつながる(西尾有紗)
- エレベーターという密室から考える — 人と人との距離感と「気まずさ」の解像度(伊東柚香)
- Unedited(中島羽那)
- 仮縫いの食卓をひらく ― 気にかけあう関係を育む地域メディアの実践 ―(矢野晶)
- 加藤研を通じたフィールドワークの面白さの探究と私たちの相互作用(吉田優斗)
- 「卒プロ」に取り組んでいるメンバーは、その進捗を記録するためのメディア『あいだを歩く』を毎月発行しています(毎月20日発行)。 → 「あいだを歩く|Walk-in-Between」(Medium)
2026年度秋学期の予定
2026年度秋学期は、おもに以下の3つの活動をおこないます。
まとめと片づけ
2026年度秋学期から2027年度春学期にかけては、「まとめと片づけ|Wrap Up and Clean Up(仮)」をテーマに活動します。
ぼくたちは、2004年秋から全国のまちを巡るフィールドワークをすすめてきました。47都道府県の踏査を目指していましたが、今年の5月、ついに「コンプリート」しました👏🏻。COVID-19の影響下では、動きが止まっていましたが、20数年をかけてひとつの「節目」をむかえました(→ これまでの軌跡:年代別インデックス)。これは、いわゆる「ゼミ合宿」のように、宿泊をともなうかたちで実施してきたものです。
日常的には、学期ごとにテーマを決めて、3〜4名(変則的に2名のことも)のグループでフィールドワークをおこない、調査にかかわる方法や態度を体験的に学ぶとともに、成果を小冊子にまとめるスタイルですすめてきました(→ これまでのテーマ一覧)。
以下の(A)〜(F)のテーマごとにアドホックに担当者を決めて、個人/ペア/グループで調査研究をおこないます。現在考えているテーマは、以下のとおりですが(まだ検討中です)、これまでの「加藤研」の活動を参照しながらすすめる、ふり返り(=まとめと片づけ)の要素が強いものだといえます。
より具体的な対象(人物、場所など)は追記していくつもりですが、現時点でのアイデアとしては、(A)〜(F)のなかから、4年生は一つ以上、2、3年生は二つ以上えらんで、進捗報告をおこないながら、学期末に向けて最終成果物をまとめます。
(A)会いに行く/話を聞く:加藤研の卒業生、加藤がかかわったそこそこ有名な「学外」の人、加藤などに話を聞く。当時の加藤研について、また現在の生活/しごとについて話を聞いて、記事をまとめる。[インタビュー]
(B)シン 大東京案内:2026年度春学期のテーマを引き継いで、今和次郎(編纂)による『新版 大東京案内』(ちくま文庫)の内容をトレースする。春学期に扱うことのできなかった「新宿」「人形町界隈」(同書上巻「盛り場」より)をはじめ、他のセクションなどから対象/対象地をえらんで、フィールドワークをすすめる。成果は、『シン 大東京案内』(2026年春学期の成果)に追記するかたちで、執筆し、印刷・製本する。[フィールドワーク、文献調査]
(C)ワークショップのデザインとファシリテーション:2024年春学期の善行団地を対象に実施したグループワーク「ダンチジン」から生まれた「団地クエスト」を再評価、リ・デザインして、教材(学習ゲームのようなもの)をつくり、団地のイベントで実施・評価をおこなう。[コミュニケーションデザイン、ファシリテーション]
(D)おかもちプロジェクト:大学院で開講してきた「モバイル・メソッド」(2015-2025)、okamochi delivery、その他「爽やかな解散」「連れてって」「はこべるよろこび」など、場づくりのための「モバイル・キット」を考えて、実装、実験する。可能であれば「フィールドワーク展XXIII」の会場(港区西麻布)界隈での実験を試みる。[文献調査、プロトタイピング、社会実験]
(E)あのポスターはいま:これまでに全国各地をめぐってつくってきたポスターの「いま」を調べる。[フィールドワーク、インタビュー]
(F)その他
成果は、基本的には冊子(ZINE)のような形でまとめます(一部のテーマについては、ものづくり・場づくりが成果になります)。冊子などの紙媒体の場合には、テーマごとの分冊にするか、雑誌のようにまとめるか…など、成果物のかたちについても検討します。ひとまず、2027年2月に予定されている「フィールドワーク展XXIII」で展示することを目指します。また、編集プロセス自体を記録・記述する方法も併せて考えます。
キャンプ
47都道府県を巡るフィールドワークは、ひとまず「一周目」が終わりましたが、いくつかの場所を再訪しながらふり返ります。2026年度秋学期は、(特プロをふくめて)2回実施予定です。
- 2026年11月7日(土)ぷちキャンプ(善行団地, 藤沢市)
- 2026年12月4日(金)〜6日(日):松本キャンプ(長野県)(準備中)
- 2027年3月:(計画中) *特プロ
フィールドワーク展
2014年度からはじまった「フィールドワーク展」も、20年以上続いています。「フィールドワーク展」は、1年間の活動をキャンパスの「外」にひらく試みです。2027年2月に予定されている展示は、23回目(23年目)となります。
展示のための会場設計、広報など、フィールドワークの成果を「まちに還す」ための展示づくりについて実践的に学びます。
「フィールドワーク展XXIII:せんたく」は、以下のとおり開催予定です。
- 日時:2027年2月11日(木・祝)〜14日(日) *ただし、14日は関係者のみの講評会
- 会場:コートヤードHIROO (〒106-0031 東京都港区西麻布4-21-2)
方法と態度
(履修のための必須条件にはしていませんが)「研究会」での活動にあたっては、学部の開講科目「フィールドワーク法」「インプレッションマネジメント」「リフレクティブデザイン」「SBC実践(出版)」などの履修経験があることが望ましいでしょう。人と人とのコミュニケーションについて考えるために、フィールドワークやインタビューに代表される定性的(質的)調査法を活用します。また、現場に密着しながら活動し、その成果を世に問うためにワークショップを実施したり、展覧会を開いたりします。
フィールドワーク
ぼくたちは、フィールドワークやインタビューに代表される質的調査(定性的調査)を重視していますが、COVID-19の影響下での暮らしを経て、方法そのものの再定義・再編成が必要となりました。とりわけ、人びとの暮らしに接近し、能動的にかかわりながらその意味や価値を理解しようという試みは、対面での「密な」コミュニケーションを前提として成り立っており、あの時期は、研究会の活動そのものが大きな制約を受けていました。
いっぽう、会議や講義のオンライン化の試みをとおして、あらたな〈現場観〉が醸成されつつあります。さまざまなメディアを駆使し、さらに時間・空間を再編成することによって、定性的調査のありようはどのように変化するのか。オンライン環境における質的調査について検討することも、引き続き大切な課題になるでしょう。
観察と記述
つぶさな観察と詳細な記述からはじまるフィールドワーク(その先にはインタビューやワークショップなどを構想・実施)をとおして実践的に考えてみたいのは、たんなる調査の方法ではありません。従来からある「問題解決」(ビジネスモデル的発想)を志向したモデルではなく、「関係変革」 (ボランタリーなかかわり)を際立たせた、あたらしいアプローチを模索しています。より緩やかで、自律性を高めたかたちで人びとと向き合い、その「生きざま」 を理解し描き出すことを目指します。
つまるところ、ぼくたちは「調査者」という、特権的に位置づけられてきた立場をみずから放棄し、人びとの日常と「ともに居る」立場へと向かうことになります。その動きこそが、変革のためのよき源泉になると考えているからです。
2006年の秋ごろから「キャンプ」をコンセプトに、「研究会」の活動をデザインしていくことにしました。そもそも、「キャンパス」も「キャンプ」も、広場や集まりを意味する「カンプス (campus)」が語源です。大学の「時間割」によって組織化される時間・空間を再編成して、いきいきした「場」づくりを実践する。その実践こそが、活気のある「グッド・プレイス(good place)」はどのように生まれ、育まれてゆくのかを考えるヒントになるはずです。
「キャンパス」と「キャンプ」
「キャンプ」は、ぼくたちのコミュニケーションや社会関係のあり方を再認識し、再構成してゆくための「経験学習」の仕組みです。
「キャンプ」と聞くと、多くの人は、テントを持って出かける、いわゆる「アウトドア」の「野営」活動を思い浮かべるかもしれません。本格的ではないにしても、ぼくたちの多くは、おそらく、幼い頃に何らかの「キャンプ」体験をしているはずです。たとえば、林間学校や野外学習などの一環として、仲間とともに、飯盒でごはんを炊いたり、星空を見上げたり、火を囲んで語ったりした思い出はないでしょうか。ここで言う「キャンプ」は、必ずしも、こうした「アウトドア」の活動を指しているわけではありません。
「キャンプ」は、ぼくたちに求められている「かかわる力」を学ぶ「場所」として構想されるものです。さほど、大げさな準備は必要ありません。「キャンプ」は、日常生活のなかで、ちょっとした気持ちの切り替えをすることで、ぼくたちにとって「あたりまえ」となった毎日を見直し、「世界」を再構成していくやり方を学ぶためにあります。それは、道具立てだけではなく、心のありようもふくめてデザインされるもので、思考や実践を支えるさまざまなモノ、そして参加者のふるまいが、相互に強固な関係性を結びながら、生み出される「場所」です。
「キャンプ」に集約される「研究会」での活動にあたっては、以下のようなふるまいが求められます。
フィールドで発想する
「キャンプ」では、現場(フィールド)での直接的な体験から、〈モノ・コト〉を考えるスタイルを大切にします。もちろん、本・論文を読むこと、理論的な枠組みをしっかりとつくることも重要ですが、まずはじぶんの目で見ること・じぶんの身体で感じることを重視します。近年、「フィールドワーク」ということばが一般的に使われるようになりましたが、「フィールドワーク」には、地道に観察・記録をおこなうこと、時間をかけてデータの整理や解釈を試みることなど、知識を生成するための「技法」としてのトレーニングには(それなりの)時間とエネルギーが要求されます。まち歩きを愉しむことは重要ですが、一人前のフィールドワーカーとして、足(と頭)を動かすことが求められます。
カレンダーを意識する
忙しいことは悪いことではないと思いますが、じぶんの〈やりたいこと〉と〈やること〉とのバランスを上手く取らないと、すべてが中途半端になります。他の授業やサークル、アルバイトなど、さまざまな活動とともに研究会を大切にすることを強く望みます。言いかえるならば、〈望ましさ〉と〈実現可能性〉をつねに意識するということです。これはやる気、能力、チャンスなどと関連していますが、スケジュールや時間のマネジメントが重要である場合が少なくありません。中途半端にならないように、研究活動のカレンダーをきちんとデザインすることが重要です。
じぶんを記録する
フィールドワークを基本的なアプローチにする際、調査の対象となる〈モノ・コト〉への感受性ばかりでなく、テーマに取り組んでいるじぶん自身への感受性も重要です。つまり、じぶんが、いったいどのような〈立場〉で〈モノ・コト〉を見ているのか…をどれだけ意識できるかということです。また、その〈立場〉をどのように明示的に表現(=つまりは調査結果の報告)できるかが大切です。フィールドワークをおこなう際には、現場で見たこと・発見したことを書き留めるためにフィールドノートを書くのが一般的ですが、研究会の時間をふくめ、日々のじぶんを記録します。
コミュニケーションの練習
ことばを大切に正確につかいたい。つねにそう思いながら活動することを心がけています。たとえば「地域活性化」「まちづくり」「コミュニティ」など、 それっぽくて、その気になるようなキーワードはできるかぎり排除して、慎重にことばをえらびたいと考えています。つまり、コミュニケーションに執着するということです。「わかったつもり」で、ことばをえらばないこと。そして、相手(受け手)を考えて丁寧に語る/表現する姿勢を執拗に求めることです。
その練習のために、ジャーナリング(日々の活動日誌)、スケッチや図解、エッセイなどをおこないます(詳細は開講時に説明します)。
履修にあたって
シラバス(大学のオフィシャルサイト版)に記載しているとおり、以下を「履修条件」として挙げています。
- フィールドワークやインタビューなど、現場での活動を「がっつり」やってみたい
- コミュニケーションの理論・実践に関心がある
- 文章を書くのが好き(ことばの難しさを実感している)
- 紙メディアの編集(製本・印刷のことなどをふくめ)に興味がある
- 展覧会の企画・運営を体験してみたい
また、加藤が担当する「フィールドワーク法」「インプレッションマネジメント」「リフレクティブデザイン」「SBC実践(出版)」のいずれか(いくつか/すべて)を履修していることが望ましいでしょう。
フィールドワークは、時間を必要とします。地道にコツコツと積み上げてゆく方法と態度を学ぶための「研究会」です。サークル、アルバイト、インターンシップ、就職活動など、やること・やりたいことがたくさんあるのはよいことですが、週1回の「研究会」の時間(時間割に表れる時間)以外に、多くの時間を供出することが条件です。それができない場合には履修をおすすめしません。フィールドに出ること、観察したモノ・コトについて文章に綴ること、たくさん語ること、そのための時間とエネルギーを惜しまないひとの履修を期待しています。
- 2026年度春学期に「研究会」を履修したひとは、上記の履修条件をもういちど確認してください。記載事項は半年前とほぼおなじですが、今学期をふり返って、履修する(履修できる)かどうかをよく考えてください。継続が難しい場合もあります。
- 原則として、7セメスター目からの新規履修は認めていません。また、2026年度秋学期が6セメスター目の場合、「研究会」の履修が「卒プロメンター」の引き受けを約束するものではありません。「研究会」と「卒プロ」は、別のもの(履修上も別科目です)なので、よく考えて行動してください。
資料
フィールドワークや学習環境の設計にかんする考え方については、下記を読んでみてください。
- 加藤文俊(2025)「コモニング」という場づくり:共食の実践から考える『The KeMCo Review』03(特集:コモンズ — コモンズ的実践)pp. 39-50.(慶應義塾ミュージアム・コモンズ)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kemcoreview/3/0/3_3-5/_pdf/-char/ja
- 加藤文俊・諏訪正樹・石川初(2023)フィールドワークの学と術 桑原武夫・清水唯一朗(編)『総合政策学の方法論的展開(シリーズ 総合政策をひらく)
- 加藤文俊(2022)態度としてのフィールドワーク:学会誌の「外」へ 『認知科学』第29巻4号, pp. 661-667.
- 加藤文俊(2020)デザインというかかわり『デザイン学研究』特集号(社会実践のデザイン学)102, Vol. 27-2, pp. 42-47.
- 加藤文俊(2017)「ラボラトリー」とデザイン:問題解決から仮説生成へ『SFC Journal』第17巻第1号 特集:Design X*X Design: 未知の分野における新たなデザインの理論・方法の提案とその実践(pp. 110-130)
- 加藤文俊(2014)まちの変化に「気づく力」を育むきっかけづくり(特集・フィールドワーカーになる)『東京人』5月号(no. 339, pp. 58-63)都市出版
読んでおきたい本(抜粋)
- ジョン・アーリ(2015)『モビリティーズ:移動の社会学』作品社
- ケネス・ガーゲン(2023)『関係の世界へ:危機に瀕する私たちが生きのびる方法』ナカニシヤ出版
- ケネス・ガーゲン(2020)『関係からはじまる:社会構成主義がひらく人間観』ナカニシヤ出版
- ポール・ワツラヴィックほか(2007)『人間コミュニケーションの語用論:相互作用パターン、病理とパラドックスの研究』二瓶社
リンク
その他、活動内容や日々の雑感についてはブログや研究室のウェブ、SNSなどで随時紹介しています。
- 加藤文俊研究室 https://fklab.today/
- 300moji https://300moji.frogleap.net/
- the first of a million leaps https://medium.com/the-first-of-a-million-leaps
- 場のチカラ プロジェクト https://camp.yaboten.net/
- Instagram https://www.instagram.com/frogleap/
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