まちに還すコミュニケーション

場のチカラ プロジェクト|Camp as a participartory mode of learning.

研究会シラバス(2026年度秋学期)

更新記録

UPDATED
(2026年7月10日)「2026年秋学期の予定」を加筆しました。
(2026年6月20日)シラバス(詳細版)入力中です。随時更新するので、マメにチェックしてください。

※ 加藤研メンバー(2026年6月20日現在):大学院生 12名(博士課程 2名・修士課程 10名)・学部生 19名(21名)(4年生 7名(9名)・3年生 6名・2年生 6名)

大学のオフィシャルサイトにある「研究会シラバス」をかならず確認してください。 

もくじ

はじめに

ぼくたちは、絶えずコミュニケーションしながら暮らしています。
ワツラヴィックらは、『人間コミュニケーションの語用論』(二瓶社, 2007)のなかで「コミュニケーションにおけるいくつかの試案的公理」について述べています。その冒頭に挙げられているのが、「We cannot NOT communicate(コミュニケーションしないことの不可能性)」です。つまり、ぼくたちは、いつでも、どこにいても、コミュニケーションせざるをえない。非言語的なふるまいはもちろんのこと、沈黙もまたメッセージであることに、あらためて気づきます。
そして、コミュニケーションについて考えることは、(いつ・どこで・だれが)集い、(何を・ どのように)語らうのかを考えることだと理解することができます。つまり、コミュニケーションへの関心は、必然的に「場所」や「場づくり」への関心へと向かうのです。この研究会では、コミュニケーションという観点から、人びとの「移動」や人びとが集う「場所」の成り立ち、「場づくり」について実践的な調査・研究をすすめています。 

いま述べたとおり、人と人とのコミュニケーション(ヒューマンコミュニケーション)が主要なテーマです。既存の学問分野でいうと社会学や社会心理学ということになりそうですが、ぼく自身は、学部を卒業後は「コミュニケーション論/コミュニケーション学」のプログラムで学びました。

何が起きるかわからない…。ぼくたちは、変化に満ちた時代に暮らしています。とくにCOVID-19の影響下では、これまで「あたりまえ」だと思っていたことを諦めたり手放したりする場面にいくつも遭遇しました。哀しい出来事にも向き合い、また不安をかかえながら不自由な毎日を強いられることになりました。でも、そのような不安(あるいは不満)、問題に向き合いながらも、明るくてエネルギッシュな人びとが、確実にいるということにも、あらためて気づきました。そこに、「何があっても、どうにかなる」という、人びとの強さを感じ ます。また、諸々の課題に向き合いながらも、ぼくたちを笑顔で迎えてくれる優しさにも出会います。それが、リアルです。

この圧倒的なパワーを持って、ぼくたちの目の前に現れるリアリティに、どう応えるか。それはまさにコミュニケーションにかかわる課題であり、ぼくたちが「研究会」の活動をとおして考えてゆくべきテーマです。お決まりの調査研究のスキームに即して、「報告書」を書いているだけでは、ダメなのです。つぶさな観察と、詳細な記録、 さらには人びととのかかわり(ときには、長きにわたるかかわりの「はじまり」に触れていることもある)をもふくめたかたちで、学問という実践をデザインすることに意味があるのです。

ぼくたちの活動は、たとえば「まちづくり」「地域づくり」「地域活性」といったテーマと無縁ではありません。でも、いわゆる「処方箋」づくりにはさほど関心がありません。 そもそも「処方箋」などつくれるのだろうか、と問いかけることのほうが重要だと考えます。「ふつうの人びと」の暮らしにできるかぎり接近し、その強さと優しさに光を当てて可視化するのです。そこまで行ければ、じゅうぶんです。あとは、人びとがみずからの暮らしを再定義し、そこから何かがはじまるはずです。ぼくたちのコミュニケーションのなかにこそ、たくさんのヒントがあります。

2026年度秋学期の予定

2026年度秋学期は、おもに以下の3つの活動をおこないます。

まとめと片づけ

2026年度秋学期から2027年度春学期にかけては、「まとめと片づけ|Wrap Up and Clean Up(仮)」をテーマに活動します。

ぼくたちは、2004年秋から全国のまちを巡るフィールドワークをすすめてきました。47都道府県の踏査を目指していましたが、今年の5月、ついに「コンプリート」しました👏🏻。COVID-19の影響下では、動きが止まっていましたが、20数年をかけてひとつの「節目」をむかえました(→ これまでの軌跡:年代別インデックス)。これは、いわゆる「ゼミ合宿」のように、宿泊をともなうかたちで実施してきたものです。
日常的には、学期ごとにテーマを決めて、3〜4名(変則的に2名のことも)のグループでフィールドワークをおこない、調査にかかわる方法や態度を体験的に学ぶとともに、成果を小冊子にまとめるスタイルですすめてきました(→ これまでのテーマ一覧)。
このほか、大学の「外」で続けてきた(やや趣味性の高い)「共食」のイベントなど、「加藤研」を構成する要素はたくさんあります。

これらを俯瞰しながら、「まとめと片づけ」をはじめます。

〔1〕個人/ペア/グループで、調べものをする・人に会いに行く・ものをつくるなど:トピックごとにアドホックに担当者を決めて、調査研究をおこないます。現在考えているテーマは、以下のとおりですが(まだ検討中です)、基本は、これまでの「加藤研」を参照しながらすすめるふり返りです。

  • 会いに行く/話を聞く(加藤がかかわったそこそこ有名な「学外」の人、加藤研の卒業生、加藤に聞く)
  • モバイル・メソッド(アーリの社会学、時間地理学、おかもち/屋台、キッチンカー、設営と撤収、出会いと別れ)
  • キャンプ論(移動大学、考現学/生活学、場づくり、ワークショップ、学習環境デザイン、ドミトリー・ライフ、フィールドワークの方法と態度)
  • 食べること(共食、ごはんP、カレーキャラバン、おべんとう、芋煮会、テラス倶楽部)
  • おかんアート(手仕事、リサイクル/アップサイクル、ガムテープ工作、モノの流れ、リファービッシュ)
  • ちいさなメディア(ZINE、300文字作文、ポスターづくり、ポッドキャスト、オングの「声の文化」、メディア論、ふだん記/綴り方教室など)

〔2〕成果をまとめて冊子(ZINE)を編纂する:2026年秋学期は、編集・簡易印刷・製本などの基礎知識・基本となる技術を学びながら、それぞれの成果をまとめます。テーマごとの分冊にするか、雑誌のようにまとめるか…など、成果物のかたちについても検討します。ひとまず、2027年2月に予定されている「フィールドワーク展XXIII」で展示することを目指します。また、編集プロセス自体を記録・記述する方法も併せて考えます。

キャンプ

47都道府県を巡るフィールドワークは、ひとまず「一周目」が終わりましたが、いくつかの場所を再訪しながらふり返ります。2026年度秋学期は、(特プロをふくめて)2回実施予定です。

  • 2026年12月:(計画中)
  • 2027年3月:(計画中) *特プロ
フィールドワーク展

2014年度からはじまった「フィールドワーク展」も、20年以上続いています。「フィールドワーク展」は、1年間の活動をキャンパスの「外」にひらく試みです。2027年2月に予定されている展示は、23回目(23年目)となります。
展示のための会場設計、広報など、フィールドワークの成果を「まちに還す」ための展示づくりについて実践的に学びます。

「フィールドワーク展XXIII:せんたく」は、以下のとおり開催予定です。

  • 日時:2027年2月11日(木・祝)〜14日(日) *ただし、14日は関係者のみの講評会
  • 会場:コートヤードHIROO (〒106-0031 東京都港区西麻布4-21-2)

研究会の履修について

2026年度秋学期に「研究会」の履修を希望するひと

何度かやりとりしながら、履修者をえらびたいと思います。ちょっと面倒かもしれませんが、お互いのためです。結局のところは「えらび、えらばれる」という関係が大事だからです。詳細についてはここに書きくわえていくので、マメにチェックしてください。

*2026年度春学期に「研究会」を履修しているひとには、別途連絡します。

方法と態度

(履修のための必須条件にはしていませんが)「研究会」での活動にあたっては、学部の開講科目「フィールドワーク法」「インプレッションマネジメント」「リフレクティブデザイン」「SBC実践(出版)」などの履修経験があることが望ましいでしょう。人と人とのコミュニケーションについて考えるために、フィールドワークやインタビューに代表される定性的(質的)調査法を活用します。また、現場に密着しながら活動し、その成果を世に問うためにワークショップを実施したり、展覧会を開いたりします。

フィールドワーク

ぼくたちは、フィールドワークやインタビューに代表される質的調査(定性的調査)を重視していますが、COVID-19の影響下での暮らしを経て、方法そのものの再定義・再編成が必要となりました。とりわけ、人びとの暮らしに接近し、能動的にかかわりながらその意味や価値を理解しようという試みは、対面での「密な」コミュニケーションを前提として成り立っており、あの時期は、研究会の活動そのものが大きな制約を受けていました。
いっぽう、会議や講義のオンライン化の試みをとおして、あらたな〈現場観〉が醸成されつつあります。さまざまなメディアを駆使し、さらに時間・空間を再編成することによって、定性的調査のありようはどのように変化するのか。オンライン環境における質的調査について検討することも、引き続き大切な課題になるでしょう。

観察と記述

つぶさな観察と詳細な記述からはじまるフィールドワーク(その先にはインタビューやワークショップなどを構想・実施)をとおして実践的に考えてみたいのは、たんなる調査の方法ではありません。従来からある「問題解決」(ビジネスモデル的発想)を志向したモデルではなく、「関係変革」 (ボランタリーなかかわり)を際立たせた、あたらしいアプローチを模索しています。より緩やかで、自律性を高めたかたちで人びとと向き合い、その「生きざま」 を理解し描き出すことを目指します。
つまるところ、ぼくたちは「調査者」という、特権的に位置づけられてきた立場をみずから放棄し、人びとの日常と「ともに居る」立場へと向かうことになります。その動きこそが、変革のためのよき源泉になると考えているからです。

2006年の秋ごろから「キャンプ」をコンセプトに、「研究会」の活動をデザインしていくことにしました。そもそも、「キャンパス」も「キャンプ」も、広場や集まりを意味する「カンプス (campus)」が語源です。大学の「時間割」によって組織化される時間・空間を再編成して、いきいきした「場」づくりを実践する。その実践こそが、活気のある「グッド・プレイス(good place)」はどのように生まれ、育まれてゆくのかを考えるヒントになるはずです。

「キャンパス」と「キャンプ」

「キャンプ」は、ぼくたちのコミュニケーションや社会関係のあり方を再認識し、再構成してゆくための「経験学習」の仕組みです。

「キャンプ」と聞くと、多くの人は、テントを持って出かける、いわゆる「アウトドア」の「野営」活動を思い浮かべるかもしれません。本格的ではないにしても、ぼくたちの多くは、おそらく、幼い頃に何らかの「キャンプ」体験をしているはずです。たとえば、林間学校や野外学習などの一環として、仲間とともに、飯盒でごはんを炊いたり、星空を見上げたり、火を囲んで語ったりした思い出はないでしょうか。ここで言う「キャンプ」は、必ずしも、こうした「アウトドア」の活動を指しているわけではありません。

「キャンプ」は、ぼくたちに求められている「かかわる力」を学ぶ「場所」として構想されるものです。さほど、大げさな準備は必要ありません。「キャンプ」は、日常生活のなかで、ちょっとした気持ちの切り替えをすることで、ぼくたちにとって「あたりまえ」となった毎日を見直し、「世界」を再構成していくやり方を学ぶためにあります。それは、道具立てだけではなく、心のありようもふくめてデザインされるもので、思考や実践を支えるさまざまなモノ、そして参加者のふるまいが、相互に強固な関係性を結びながら、生み出される「場所」です。

「キャンプ」に集約される「研究会」での活動にあたっては、以下のようなふるまいが求められます。

フィールドで発想する

「キャンプ」では、現場(フィールド)での直接的な体験から、〈モノ・コト〉を考えるスタイルを大切にします。もちろん、本・論文を読むこと、理論的な枠組みをしっかりとつくることも重要ですが、まずはじぶんの目で見ること・じぶんの身体で感じることを重視します。近年、「フィールドワーク」ということばが一般的に使われるようになりましたが、「フィールドワーク」には、地道に観察・記録をおこなうこと、時間をかけてデータの整理や解釈を試みることなど、知識を生成するための「技法」としてのトレーニングには(それなりの)時間とエネルギーが要求されます。まち歩きを愉しむことは重要ですが、一人前のフィールドワーカーとして、足(と頭)を動かすことが求められます。

カレンダーを意識する

忙しいことは悪いことではないと思いますが、じぶんの〈やりたいこと〉と〈やること〉とのバランスを上手く取らないと、すべてが中途半端になります。他の授業やサークル、アルバイトなど、さまざまな活動とともに研究会を大切にすることを強く望みます。言いかえるならば、〈望ましさ〉と〈実現可能性〉をつねに意識するということです。これはやる気、能力、チャンスなどと関連していますが、スケジュールや時間のマネジメントが重要である場合が少なくありません。中途半端にならないように、研究活動のカレンダーをきちんとデザインすることが重要です。

じぶんを記録する

フィールドワークを基本的なアプローチにする際、調査の対象となる〈モノ・コト〉への感受性ばかりでなく、テーマに取り組んでいるじぶん自身への感受性も重要です。つまり、じぶんが、いったいどのような〈立場〉で〈モノ・コト〉を見ているのか…をどれだけ意識できるかということです。また、その〈立場〉をどのように明示的に表現(=つまりは調査結果の報告)できるかが大切です。フィールドワークをおこなう際には、現場で見たこと・発見したことを書き留めるためにフィールドノートを書くのが一般的ですが、研究会の時間をふくめ、日々のじぶんを記録します。

コミュニケーションの練習

ことばを大切に正確につかいたい。つねにそう思いながら活動することを心がけています。たとえば「地域活性化」「まちづくり」「コミュニティ」など、 それっぽくて、その気になるようなキーワードはできるかぎり排除して、慎重にことばをえらびたいと考えています。つまり、コミュニケーションに執着するということです。「わかったつもり」で、ことばをえらばないこと。そして、相手(受け手)を考えて丁寧に語る/表現する姿勢を執拗に求めることです。
その練習のために、ジャーナリング(日々の活動日誌)、スケッチや図解、エッセイなどをおこないます(詳細は開講時に説明します)。

履修にあたって

シラバス(大学のオフィシャルサイト版)に記載しているとおり、以下を「履修条件」として挙げています。

  • フィールドワークやインタビューなど、現場での活動を「がっつり」やってみたい
  • コミュニケーションの理論・実践に関心がある
  • 文章を書くのが好き(ことばの難しさを実感している)
  • 紙メディアの編集(製本・印刷のことなどをふくめ)に興味がある
  • 展覧会の企画・運営を体験してみたい

また、加藤が担当する「フィールドワーク法」「インプレッションマネジメント」「リフレクティブデザイン」「SBC実践(出版)」のいずれか(いくつか/すべて)を履修していることが望ましいでしょう。

フィールドワークは、時間を必要とします。地道にコツコツと積み上げてゆく方法と態度を学ぶための「研究会」です。サークル、アルバイト、インターンシップ、就職活動など、やること・やりたいことがたくさんあるのはよいことですが、週1回の「研究会」の時間(時間割に表れる時間)以外に、多くの時間を供出することが条件です。それができない場合には履修をおすすめしません。フィールドに出ること、観察したモノ・コトについて文章に綴ること、たくさん語ること、そのための時間とエネルギーを惜しまないひとの履修を期待しています。

  • 2026年度春学期に「研究会」を履修したひとは、上記の履修条件をもういちど確認してください。記載事項は半年前とほぼおなじですが、今学期をふり返って、履修する(履修できる)かどうかをよく考えてください。継続が難しい場合もあります。
  • 原則として、7セメスター目からの新規履修は認めていません。また、2026年度秋学期が6セメスター目の場合、「研究会」の履修が「卒プロメンター」の引き受けを約束するものではありません。「研究会」と「卒プロ」は、別のもの(履修上も別科目です)なので、よく考えて行動してください。
資料

フィールドワークや学習環境の設計にかんする考え方については、下記を読んでみてください。

  • 加藤文俊(2025)「コモニング」という場づくり:共食の実践から考える『The KeMCo Review』03(特集:コモンズ — コモンズ的実践)pp. 39-50.(慶應義塾ミュージアム・コモンズ) 

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/kemcoreview/3/0/3_3-5/_pdf/-char/ja

  • 加藤文俊・諏訪正樹・石川初(2023)フィールドワークの学と術 桑原武夫・清水唯一朗(編)『総合政策学の方法論的展開(シリーズ 総合政策をひらく)
  • 加藤文俊(2022)態度としてのフィールドワーク:学会誌の「外」へ 『認知科学』第29巻4号, pp. 661-667.
  • 加藤文俊(2020)デザインというかかわり『デザイン学研究』特集号(社会実践のデザイン学)102, Vol. 27-2, pp. 42-47. 
  • 加藤文俊(2017)「ラボラトリー」とデザイン:問題解決から仮説生成へ『SFC Journal』第17巻第1号 特集:Design X*X Design: 未知の分野における新たなデザインの理論・方法の提案とその実践(pp. 110-130)
  • 加藤文俊(2014)まちの変化に「気づく力」を育むきっかけづくり(特集・フィールドワーカーになる)『東京人』5月号(no. 339, pp. 58-63)都市出版
読んでおきたい本(抜粋)
  • ジョン・アーリ(2015)『モビリティーズ:移動の社会学』作品社
  • ケネス・ガーゲン(2023)『関係の世界へ:危機に瀕する私たちが生きのびる方法』ナカニシヤ出版
  • ケネス・ガーゲン(2020)『関係からはじまる:社会構成主義がひらく人間観』ナカニシヤ出版
  • ポール・ワツラヴィックほか(2007)『人間コミュニケーションの語用論:相互作用パターン、病理とパラドックスの研究』二瓶社
リンク

その他、活動内容や日々の雑感についてはブログや研究室のウェブ、SNSなどで随時紹介しています。