まちに還すコミュニケーション

場のチカラ プロジェクト|Camp as a participartory mode of learning.

「つきみててん」へ行こう。(1)

今年は、初のオンライン開催。

「つきみててん」によせて

また展覧会を準備する季節になった。いつも、冬の訪れを合図に「フィールドワーク展」に向けて慌ただしく動きはじめる。ずいぶん前から決まっていたはずなのに、なかなか準備がすすんでいなかったり、進捗がきちんと共有されていなかったり。学生たちに苦言を呈しながら、ドキドキしながら、不思議な高揚感とともに過ごす。毎年それをくり返して、17年目である。

そしていまは、ちがう意味でドキドキしながらこの文章を書いている。今年はCOVID-19の騒ぎで、ぼくたちの活動が大きく制限されることになった。そもそも、フィールドワークは移動が前提だ。じっとしているわけにはいかない。そして、人びとと語らい距離を縮めようとするのが基本だ。密度の濃いコミュニケーションこそが、フィールドワークを豊かで起伏に富んだものにする。でも、多くのコミュニケーションが画面越しの平坦なものになってしまった。

この一年近く、ぼくたちは窮屈な毎日のなかでも探究心を失うことなく、あれこれと工夫をしながら活動を続けてきた。「距離」について、あらためて考える機会にもなった。「フィールドワーク展」は、ぼくたちにとって大切な場所だ。じゅうぶんに注意をしながら、展覧会を開こうと思う。元気に生きのびていることを、見てほしい。

1月の満月の晩に、「つきみててん」のウェブが公開された。眩しくて綺麗な月だった。欠けたり満ちたり。あと2回満月を眺めたら、まもなく展覧会のはじまりだ。

2020年12月1日
加藤文俊

https://vanotica.net/fw1017/ より)

 ぼくたちは、毎年2月上旬に「フィールドワーク展」を開催しています。学部4年生・大学院生のプロジェクト報告や、学部1〜3年生のグループワーク、全国のまちを巡る「キャンプ」の試みなど、加藤文俊研究室の1年間の活動成果を報告する場です。2004年度に第1回を開催して以来、17回目となります(参考:これまでに開催した「フィールドワーク展」一覧→ http://fklab.today/exhibition)。

今回は「つきみててん」というタイトルで、展示の準備をすすめてきました。

そもそも、フィールドワークは身体全体で受けとめる体験なので、その成果はパネルにしたり展示台に載せたりできる性質のものではありません。しかしながら、あえて何らかの形をあたえることで、会話のきっかけをつくることができます。語られることによって、フィールドワークの体験が(不完全ながらも)再現されます。なにより、まちなかで展覧会を開くのは、フィールドで考えたこと・気づいたことは、ふたたびフィールドに「還す」べきだと考えているのです。

この時期に開催するのは、学期末・年度末というタイミングだからです。それは、多くの卒業生(何人かは9月に卒業)にとって大切な「節目」にあたります。つまり、ケジメをつけて修了・卒業しようということ。いっぽう、あたらしくメンバーとして参加を希望している・検討している学生にとって、加藤研の具体的な活動内容を知るよい機会になると考えています。
ぼく(ぼくたち)の活動については、書籍や論文をとおして知ることができます。大学で担当している授業(たとえば「フィールドワーク法」「リフレクティブデザイン」「インプレッションマネジメント」など)を受講すれば、基本的な考え方や人となりに直接触れることになります。もちろん、シラバス(https://camp.yaboten.net/entry/21s)には事務的なこともふくめ、あれこれと書かれています。
そして、このちいさな展覧会。会場にいる研究室メンバーとのコミュニケーションをとおして、ぼくたちの活動を近くで見てもらえればと思います。

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「フィールドワーク展XVII:つきみててん」は、オンラインで開催することになりました。詳細は https://vanotica.net/fw1017/ ほかで随時お知らせします。

 いうまでもなく、2020年度は特別な1年です。多くの場面で、フィールドワークやインタビューといった方法を用いながら活動してきたので、COVID-19によって動きを止められてしまいました。まちに出かけて人に会い、一緒に(食べたり飲んだりしながら)語らうことが、ぼくたちにとって大切な「方法」です。すべてが「密」を前提に成り立っている、というより「密」を生むための態度について学んでいたのです。春学期は、ぼく自身、とにかく苦しみました。

秋学期からは少しずつキャンパスに戻れるようになり、「非接触型」のフィールドワークを試していました。展覧会については、みなとみらい(横浜市西区)のBUKATSUDO(2015〜2017年度の会場です)を会場に決めて、じゅうぶんな感染予防対策を前提に、予約制で開催するつもりでいました。

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2016年2月6日:フィールドワーク展XII:こたつとみかん(BUKATSUDO)

しかしながら、新年早々にふたたび「緊急事態宣言」が発出され、それにともなって大学の「学外行事」にかんするガイドラインも書き換えられました。準備や設営などのことも考えると、やはり密度の高い状況をつくってしまうことになります。学生たちに注意する立場にいながら、ぼく自身も、やはりフェイストゥフェイスの場面では(これまで封じられていた分だけ)油断しておしゃべりに興じてしまいそうな気もします。結局のところは、それなりの人数が集うことになる。なかには不安に感じる人もいるはず。よくよく考えて、オンラインで開催することにしました。

これは、かなり苦渋の決断でした。学生はもちろんだと思いますが、ぼく自身もこれまで16年間続けてきただけあって、かなり凹みました。でも、展覧会を閉じるわけではなく、オンラインでもいきいきとした「場所」をつくれるのではないかと、気持ちを切り替えました。遠くに離れているみなさんにも、しばらくご無沙汰している人にも、オンラインだったら会えるのではないかと思いはじめています。だとすれば、ちゃんと宣伝しなくては…。

すでに「広報担当」の学生たちを中心に、Facebookのページ(https://facebook.com/fw1017)やInstagram(https://www.instagram.com/tsukimiteten_1017/)で展示内容の紹介がはじまっています。その内容と重複する部分もあると思いますが、ぼくの立場から、いろいろと大変だった1年間をふり返りつつ、「つきみててん」の見どころなどを書いていきたいと思います。

(つづく:次回は「かとう研の1年編」です。)

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