田辺キャンプ｜2012年8月30日（金）〜9月1日（日）和歌山県田辺市
田辺へ
盛夏。こんどは、田辺のまちに出かけました。「上山（かみのやま）キャンプ」（2011年5月）のときにお世話になった中山さん経由で、「アート田辺2012」とのつながりができて、今回は、泊まりもポスターづくりの作業も、「もじけハウス」が拠点です。「もじけハウス」は、海にほど近い、築100 年の古民家アトリエ。廣本さんに案内されてなかに入ると、襖に鮮やかな世界地図が描かれていて、早くも楽しい気分になります。
準備はちょっとドタバタしましたが、ポスター展については、事前に告知用のポスターも完成していました。取材先えらびも印刷のことも、いままでの「キャンプ」のなかで、一番整っていたように思います。
今回は夏休み中だったので、参加メンバーはふだんより少なめでしたが、それでも20人弱。「カレーキャラバン」も合流して、とても賑やかです。ほとんどのメンバーが、前日の晩に「もじけハウス」に集まりました。
まちの人びとに会いに行く
31日の朝、簡単なオリエンテーションのあと、学生たちはグループに分かれて、まちに出かけました。まちの中心部だけではなく、少し離れた所にある果樹園や工房などもふくめ、今回の取材先は9か所です。話を聞くのはもちろん、仕事の現場を間近で見ることも大切です。
いつものことですが、人びとの日常に触れ、細やかな目で観察していると、毎日の暮らしのなかで培われてきた、さまざまな〈しかた〉が見えてきます。ちょっとしたひと言に、家族やまちへの想いが表れてくるはずです。人びとの生活のなかにこそ、学ぶべきさまざまなレッスンが埋め込まれていることに、あらためて気づきます。
取材の合間に、ポスターを展示することになっている旧市立図書館を見に行きました。とても趣のある建物で、広い壁を存分につかうことができます。そこで、9か所の取材をもとにした田辺の人びとのポスターだけではなく、これまでに、ぼくたちが全国を巡りながらつくってきたポスターも、併せて展示することになりました。
ポスターをつくる
学生たちは、取材を終えて「もじけハウス」に戻ると、さっそくポスターづくりに取りかかります。大広間にたくさんのノートPCが並び、写真をえらんだり、言葉を綴ったり。何度も見てきた光景ですが、この雰囲気はなかなかいいものです。
それぞれの作業は独立しているものの、全員が、ポスター展という発表の〈場〉を意識しながら手を動かしているので、不思議な一体感が生まれるのでしょう。熱気のある部屋のなかで、べつのグループの話し声は、雑音ではなく、作業のスピードやリズムを刻む役割を果たします。
夕方になって、「カレーキャラバン」のメンバーたちが、カレーを完成させました。みんな、しばし手を休めて、「もじけハウス」のすぐそばにある「リカーショップ スナノ」の駐車場を目指します。田辺の食材をつかった「タナベカレー」の鍋を囲んでエネルギーを補給し、ふたたびポスターづくりの作業に向かいました。
みんなで語る
一夜明けて9月1日の朝、無事にポスターのデータが完成しました。数名の学生は、データを携えて市役所に向かい、ポスターの印刷をはじめます。ひと晩で仕上げた17枚のポスターが、順番に、A1サイズの光沢紙に出力されていきます。
旧市立図書館では、展示の準備がはじまりました。刷り上がったポスターから順番に貼り、その場を「ギャラリー」に変えます。これまでにつくった100枚近くのポスターも一緒に並べて、「田辺の人びとのポスター展」の開催です。入り口のところには、カフェスペースもできて、一日かぎりではもったいない、とても 素敵なポスター展になりました。
前日に取材でお邪魔した先の皆さんも、続々と展示会場にやって来ました。
ほぼ1日ぶりに学生たちと再会し、貼ってあるポスターを一緒に眺めつつ、語ります。この時間がとても刺激的です。前日のことを思い出しながら、取材のひとときが、どのように1枚のポスターに表現されたのか。ポスターは人を饒舌にし、笑顔があふれる会場になりました。田辺の人びとのポスターは、すべて置いて帰ります。ぼくたちの「もじけハウス」の夏は終っても、ポスターは、引き続き、田辺のまちを巡るからです。
