まちに還すコミュニケーション

場のチカラ プロジェクト|Camp as a participartory mode of learning.

Day 1: はじまり

2022年8月19日(金)

土佐町で考える・つくる

土佐町の「教室」で目覚めた。いよいよ、はじまる。日中は暑くても、朝夕が涼しいと、しのぎやすい。7:30に朝食を済ませて、土佐町役場へ。そこからまちが仕立ててくれたバスに乗って、高知空港へ。

空港では、参加する高校生、サポート役の大学生が少しずつ集まってくる。高校生たちは、すぐさま輪になって自己紹介をはじめる。やはり、キャンパスで実施するのとはずいぶんちがう。いつもは、ぼくにとっての「ホーム」のような場所でみんなを迎えるわけだが、今回は、全員が「アウェイ」なのだ。

つづいて、バスはJR高知駅へ。ここでもさらに10名ほどが合流した。あいにく3名の高校生が欠席になってしまったが、総勢30名ほどで「いしやまの里」に向かった。ほぼ予定どおり。受付を済ませると、ちょうどお昼の時間になった。空港や駅での「はじめまして」を経て、バスの時間でも少しずつ打ち解けてきたようで、全員がお揃いのTシャツに着替えて、すでに一体感がある。2年続けてオンライン開催だったので、この雰囲気もひさしぶりだ。食事を終えて簡単なオリエンテーションを経て、14:00ごろから取材に出かけることになっている。

今回は、ポスターづくりのワークショップをおこなう。ぼくたち(加藤研)が、もう10数年続けている活動なので、全体の流れはよくわかっている。まちの人びとの暮らしに近づき、話を聞き、その体験をもとにポスターをつくる。最後は、ちいさな展覧会をひらいて、みなさんに(まちに)成果を還す。慣れているとはいえ、いつもとはちがう。
たとえば、ふだんはペア(2名)で動くのだが、今回は高校生2名と大学生1名、3名ひと組でまちに散る。高校生のためのワークショップなので、大学生はそのサポート役である(とくにポスターのレイアウトなどのさい、手を動かしてもらう)。なにより、ふだんは研究会の活動としておこなっているので、基本的な考え方や事前の準備、フォローアップなどもふくめてワークショップを位置づけることができる。

「キャンプ土佐」では、ごく簡単な説明をしただけで、動きはじめる。どうなることやら、ちょっと心配だが、ここまで来たら流れにまかせるしかない。取材先は、あらかじめ土佐町の町田さんを中心に候補者をえらんでもらっていた。事前の説明は、おそらく難しかったと思うが(ぼくたちが、ふだんポスターづくりのワークショップを計画するときも、事前の調整、お膳立てがなかなか難しい)、それぞれのグループが、9か所(9人)のもとへと移動して取材をおこなう。もうひとつ、「記録班」が3名。ポスターづくりはせずに、取材のようすを記録してビデオを編集することになっている。

「いしはらの里」から徒歩で行ける場所もあったが、遠方については、土佐町のみなさんの細やかな調整のおかげで、クルマで行き来する段取りになっていた。全グループが出発するのを見送ったあと、ぼくも数か所を巡った。カーブをくり返していると、あっという間に山の中腹に着く。急峻な山々であることを身体で感じる。取材先をいくつか訪ねたが、クルマを停めるたびに美しい棚田が目に入ってくる。とにかく、広い。空も田んぼも、大きく広がっている。
「いしはらの里」に戻って、棚田の写真をつかって「ポスター展のポスター」をつくった。この作業をすると、「キャンプ」が動いていることを実感する。考えてみれば、学生たちとの宿泊を伴う活動は、本当にひさしぶりだ。

長い時間をかけて旅をして、たくさんの高校生・大学生とともに、渓谷のなかの「教室」にいる。そのことが、なんだか不思議に思えてくる。偶然と幸運で、集まった。土佐町の美しさもくわえると、情報量が多すぎて圧倒されている。すべてを書くことはできないので、「記録班」のビデオに期待しよう。

それぞれのグループが、図書室や教室で作業をしている。廃校になる前は、子どもたちの声で、この校舎はにぎやかだったにちがいない。ポスターのデータも、順調に提出されている。明日は朝から印刷して、ポスター展の準備をする。