まちに還すコミュニケーション

場のチカラ プロジェクト|Camp as a participartory mode of learning.

コミュニティリサーチのデザインと実践(特別研究プロジェクトB)

2025年度夏季「特別研究プロジェクトB|コミュニティリサーチのデザインと実践は、長崎県五島市を対象地に実施します。参加者は、五島市でのフィールドワークをおこない、成果をスケッチ(風俗採集)、ポスター、ビデオなどのフォーマットでまとめる予定です。

本研究プロジェクト(特別研究プロジェクトB)は、地域コミュニティの調査方法の設計および実践について、フィールドワークやワークショップをとおして学ぶものである。

私たちに比較的なじみ深いコミュニティ調査は、地域における諸問題を同定し、それに対する解決方法を探るというアプローチである。地域をめぐる問題状況のマッピングが行われ、対処方法や優先順位の検討、さらにはコストの試算・配分等についての議論がすすめられる。問題状況は、その規模や緊急性、 抽象度に応じて分類されるが、Kretzmannら(1993)は、こうした“needs-driven”とも呼ぶべきアプローチ自体が、問題状況に向き合う当事者を必要以上に“クライアント化”する可能性があると指摘する。ひとたび地域コミュニティにおける課題が「問題」として提示され共有されると、当該の「問題」に関わるアクターやその役割関係が固定的になりがちだからである。また、地域固有の問題でありながら、不特定多数の人びとを「受け手」に想定した記述、報道がなされると、問題状況そのものが、あたかも「他人事」であるかのように対象化されることになる。

近年、アメリカ、オーストラリアを中心に、Asset-Based Community Developmentアプローチ(以下ABCDアプローチと呼ぶ)の実践が拡がりつつある。同アプローチは、地域におけるニーズを発掘し、それに対して「問題解決」を試みるという“needs-driven”の発想ではなく、まずは地域のもつ「資 産」を熟知し、その潜在的な可能性を模索するものである。つまり、“capacity-focused”という立場から、地域に偏在する多様な「資産」の理解を試みることになる。ABCDアプローチでは、地域コミュニティが保有する「資産」を、個人の属性・能力、地域における集まり、地域の組織・施設から構成されるものとして位置づけ、地域の「強み」(潜在的な可能性)を可視化しようと試みる。

本プロジェクトは、上記のような理論的動機にもとづき、地域コミュニティの調査設計のあり方について、実践的に学ぶことを目指している。学生たちは、長崎県五島市でフィールドワークやインタビューを行い、滞在中に成果をまとめて報告を行う。