まちに還すコミュニケーション

場のチカラ プロジェクト|Camp as a participartory mode of learning.

盆地の教室(2011)

かみのやまへ

2011年3月11日の「東日本大震災」の影響で、大学の学事日程等が大幅に変更されて、新学期をむかえることになりました。「場のチカラ プロジェクト」も、あらたに12名が加わってスタートです。ゴールデンウィーク明けに授業が開始されることになったので、あたらしいメンバー構成で、お互いのことをまだよく知らないままの「キャンプ」となりました。

今回の「キャンプ」は、5月21日(土)〜22日(日)にかけて山形県上山市へ。震災の直接の被害はさほどなかったものの、やはり「東北」からは足が遠のいているらしく、温泉地で知られる上山も、観光客は激減しているとのことです。

「かみのやまキャンプ」は、10年ほど前から「田舎時間」という活動を展開している中山誠基さんとのご縁から実現しました。今回は、ポスターづくりの「キャンプ」です。ポスターづくりは、これまでに何度かすすめてきたやり方で、まちではたらく人びとを取材し、写真とコピー・文章で、フィールドワークの成果をA1サイズのポスターとしてまとめるものです。「時代屋」 の別亭を作業の拠点として使わせていただくことになり、1泊2日の「キャンプ」がスタートしました。

 

まちの人びとに会いに行く

「時代屋」での簡単なオリエンテーションのあと、学生たちは2名(3名)のグループに分かれて、まちに出かけました。かみのやまの中心部だけではなく、少し離れた所にある農家や果樹園などもふくめ、今回の取材先は11か所です。話を聞くのはもちろん、仕事の現場を間近で見ることも大切です。

わずかな時間であっても、できるだけ人びとの日常に触れ、細やかな目で観察していると、毎日の暮らしのなかで培われてきた、さまざまな〈しかた〉が見えてきます。人とのやりとりの痕跡に気づく場合もあるでしょう。ちょっとしたひと言に、家族やまちへの想い、あるいは震災後の東北地方や日本についての向き合い方が表れてくるはずです。
中山さんが事前に調整したくれたこともあって、まちの人びとは、ぼくたちの来訪を優しく受け入れてくれました。忙しい時間を垣間見るだけで、まちが「教室」であることをあらためて感じます。生活のなかにこそ、学ぶべきさまざまなレッスンが埋め込まれているのです。

 

ポスターをつくる

取材を終えて宿に戻り、さっそくポスターづくりに取りかかります。いつもの「キャンプ」では、大広間で全員がノートPCを並べて作業をすることが多いのですが、今回は「別亭」と「母屋」の2か所に分かれてすすめることになりました。
ひとつの部屋ではないものの、みんなの気配を近くに感じながら、同じ作業に向き合っていることで、いつも以上に「チーム」について考えされられました。離れているようで近い。ちょっと不思議な感覚でした。

夕食の時間には、グループごとにポスターに使う写真を紹介し、日中の取材の様子や進捗を共有しました。そして、引き続き、翌朝の10:00までにデータを完成させるべく、作業がすすめられました。これまでにはなかった、温泉を楽しむ時間もあり、なかなか充実した「キャンプ」です。
みんなの作業と並行して、木村さんと一緒に「ポスター展」のポスターやウェブをつくりました。釜石(2009年冬)に出かけたときの「入り江の教室」を頭に浮かべつつ、今回は「盆地の教室」と名づけました。文字どおり、山々に囲まれたかみのやまのまちが、ぼくたちの「教室」でした。

 

みんなで語る

2日目の朝、無事にポスターのデータが完成しました。今回は、上山市役所の大判プリンターを使わせていただけることになったので、中山さんと数名の学生は、データを携えて市役所に向かい、印刷をスタートさせました。1枚1枚、A1サイズの光沢紙に出力されていきます。

他のメンバーは、「カミン」というショッピングセンターに移動し、刷り上がったポスターから順番にパネルに貼り、照明などを調整して、その場を「ギャラリー」に変えます。展示案内のポスターもセットして、「かみのやまで働く人びとのポスター展」の開催です。

前日に取材でお邪魔した先の皆さんも、続々と展示会場にやって来ました。ほぼ1日ぶりに学生たちと再会し、貼ってあるポスターを一緒に眺めつつ、語ります。この時間がとても刺激的です。前日のことを思い出しながら、お互いに言葉を交わしたひとときが、どのように1枚のポスターに表現されたのか。ポスターは、コミュニケーションを促します。とくに、今回はたくさんのかたが足をはこんでくれたので、展示のオープニングは大いに盛り上がりました。