まちに還すコミュニケーション

場のチカラ プロジェクト|Camp as a participartory mode of learning.

〈渡り〉のスタイル

学生たちとともに、全国のまちを巡るフィールドワークは、10数年前にはじまった(2007年ごろから「キャンプ」という呼び方をするようになった)。ややばらつきはあるが、いつも20名くらいで出かけることになる。もともと、こういう展開を想定していたわけではない。いくつかのまちに出かけて、あらためてそれぞれの場所の豊かな個性に驚き、たくさんの出会いに恵まれたことで、47都道府県へと活動を拡げてみたくなった。単純なことながら、面白がって白地図を塗りはじめたら、なおさら楽しくなった。
もちろん、同じまちをくり返し訪れて、長きにわたって理解を深め、人びととの関係をじっくり育むという方向もありえた。だが、幼いころから引っ越しが多かったせいだろうか。「移動」ということに関心を寄せているからだろうか。結局のところ、できるだけ多くのまちに出かけてゆく〈渡り〉のスタイルになった。いずれもわずか数日の滞在だから、じゅうぶんにまちや人びとの暮らしを理解しているとは言いがたい。だが、慌ただしい滞在だからこそ見えること、気づくことがあるはずだと考えるようになった。〈渡り〉という方法や態度にも、きっと価値があるにちがいない。

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学期末のドタバタからようやく解放されたばかりだが、さっそく秋の準備をはじめている。(これから訪れる予定で調整している分もふくめて)あらためて地図を塗ってみたが、まだまだ行くべき場所がたくさんある。焦る必要もないが、のんびりしていてもいけない。体力は確実に衰えてきているし、(そういう年回りなのか)あれこれ仕事がやってくるので、きちんと計画を立てて時間とエネルギーを確保しよう。

残る府県にも色が塗られたとき、きっとそれなりの達成感を味わうことができるはずだ。のべ人数で考えると、1000人近い学生たちと、全国各地に出かけたことになるからだ。そのいっぽうで、10数年続けてきたとはいえ、それほど大したことではないようにも思えて、いささか自虐的な気分になる。学生とともに47都道府県を巡ることの意義を問う想いが、頭をもたげてくる。
いや、だいじょうぶ。じぶんに言い聞かせる。まずはいちど地図を塗りつぶして、それから二巡目をはじめよう。それが、〈渡り〉のスタイルなのだ。🏊