まちに還すコミュニケーション

場のチカラ プロジェクト|Camp as a participartory mode of learning.

岩淵町界隈を歩く:人と暮らしに近づく

2022年6月4日(土)

今学期は、大学院社会学研究科の「プロジェクト(JST)I」という科目を担当している。ここでJSTと呼んでいるのは、JST(科学技術振興機構)の「次世代研究者挑戦的研究プロジェクト」のことだ。慶應義塾がその支援を受けて「大学院博士後期課程学生支援プロジェクト」をスタートさせ、その一環で設置されたものだ。博士課程になると、一人ひとりが博士論文に向けた研究に勤しむので、科目とはいっても、どちらかというと受給者どうしを出会わせるための仕組みだと理解することができる。
考えてみれば、ウチの大学院は13の研究科(博士課程)があって、たくさんの大学院生がいるのに、横のつながりをつくる機会は(ぼくの知るかぎり)ほとんどなかった。

だから、「プロジェクト(JST)I」は、ありそうでなかった科目で、ことなる研究科に所属する学生たちが参加登録できるようになっている。きょうは、ぼくが担当する「岩淵町界隈を歩く:人と暮らしに近づく」を実施した。

岩淵町との出会い

遡ると、ぼくと岩淵町との出会いは、2017年に「自由大学」での講演を頼まれたのをきっかけに生まれたことになる。「ローカルイベントをつくろう」というテーマで全5回の講義が企画され、カレーキャラバン(2012年から続けているプロジェクト)のリーダー(江口亜維子さん)と一緒に、ぼくたちの活動を紹介する機会があった。その席で出会ったのが、だいちゃんこと米谷太揮さんだった。

直後にだいちゃんと「お友だち」になり、やりとりがはじまり、そこから話がすすんで、2018年1月27日に岩淵町に行ってカレー(いわぶちコトヨロカレー)を、さらに翌年の2019年3月17日、カレーキャラバンの7周年記念の日にも、ふたたび岩淵町に行って、このときは正光寺の境内をお借りしてカレー(ナナイロカレー)をつくった。

岩淵町に行って出会ったのが、オーリーこと織戸龍也さんである。オーリーは、株式会社 岩淵家守舎の代表取締役で、だいちゃんとともに、co-toiro iwabuchiというコワーキングスペースを主宰し、リノベーションやビジネスの誘致、イベントの開催など、ちいさくはじめて大きく広げてゆくアプローチで、岩淵町を面白くしようといろいろと仕掛けている。

岩淵町を歩く

今回は、「プロジェクト(JST)I」を担当するにあたって、岩淵町をフィールドにえらんだ。およそ3年ぶりに岩淵のようすを見てみたかったし、なにより、オーリーとだいちゃんなら協力してくれると思ったからだ。ぼくがいろいろとムリを言ってしまったが、まちとのかかわり方や、コンセプトをていねいに説明してくれた。
参加者は、薬学研究科、メディアデザイン研究科(KMD)から2名ずつ、社会学研究科、文学研究科からそれぞれ1名(計6名)。アートセンターの本間さん、加藤研の学部生1名をくわえて、総勢9名で岩淵町(東京都北区)界隈を歩いた。

きょうの大まかな流れは以下のとおり。

  • 10:30ごろ 集合 co-toiro iwabuchi(〒115-0041 東京都北区岩淵町15-13)
  • 10:30〜11:40ごろ(co-toiroにて)
    •  自己紹介
    • レクチャー:岩淵家守舎のアプローチ・活動紹介、岩淵町の紹介(織戸さん・米谷さん)
  • 11:40〜12:45ごろ
    • まち歩き
  • 12:50ごろ 解散

ずっとCOVID-19の影響下にあったので、ひさしぶりのまち歩き、ひさしぶりの岩淵町を満喫することができた。
上述のとおり、ぼく自身も他の研究科の学生と話す機会はないに等しいので、この「プロジェクト」はよい企画だと思っていた。ほぼノープランだったが、とにかくぶらぶらと歩く感じでどうだろう。岡原さん(社研委員長)からは「昨今の博士院生、時間に追われ、業績圧力に追われ、きっと、ノープランのブラブラ体験の価値が身に染みるのではないでしょうか!笑」とのコメントをいただいたので、ノープランのまま現場へ(いちおう、界隈の地図だけは配布用に準備しました)。

オーリーとだいちゃんのレクチャーが、予想以上に?(ごめんなさい)密度が濃くて、話を聞いた直後に現場を見ることができたのは、本当によかったと思う。3年ぶりだったので、変化もあった。聞けば、本間さんはご近所(というか地元)とのことで、担当教員でありながら、ごく自然にまち歩きを楽しんでいるようすだった。

いろいろな地域のポテンシャル(可能性)に目を配り、上手に組み合わせながら形にしてゆくというアプローチは、まさにABCD(Asset Based Community Development)アプローチの実践なのだと思う。
レクチャーに出てきた物件を眺めてから、岩淵橋で新河岸川を渡って、さらに荒川土手へ。よく晴れて、気持ちのいいまち歩きになった。

おみやげに、昨年の冬にスタートさせたという岩淵ブルーイングの「河川敷IPA」を買って帰ってきた。

このあとは、オンラインでふり返りのセッションを開く予定。